堂々たるオーソドキシー

大阪ミナミは島之内。高畑均さんは「味吉兆」での15年の修業を経て、生まれ育ったこの地に自分の店を持った。そして、2000年の開業から20年、今も師匠・中谷文雄さんの教えを大事にしている。「毎日、昨日よりもおいしくなるように心がけなさい」。日本料理の王道を行く高畑さんである。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

大阪ミナミは島之内。高畑均さんは「味吉兆」での15年の修業を経て、生まれ育ったこの地に自分の店を持った。そして、2000年の開業から20年、今も師匠・中谷文雄さんの教えを大事にしている。「毎日、昨日よりもおいしくなるように心がけなさい」。日本料理の王道を行く高畑さんである。

  • 太庵、八寸太庵、八寸
    花山葵のおひたし、ワカメとミル貝の酢のもの、長いものとろろ素麺、富山産白海老にフキノトウの佃煮、筍の千切りとナマコノコ……月替わり・5種の口取りが並ぶ八寸。
  • 太庵、まこがれいのお造り太庵、まこがれいのお造り
    5月が旬の甘手かれい(まこがれい)のお造り。その名の通り、甘みのあるおいしいかれい。透き通るような白い身が美しい。
  • 太庵、八寸
  • 太庵、まこがれいのお造り

また、“まんべんなく精神”は、器のコレクションにも発揮されている。

「器が大好きなんです。どちらかというと陶器より磁器が多いでしょうか。
今回のお造りのお皿は、古伊万里を今に再現したような伊万里焼です。雨の中、傘をさして、空がきれいに晴れてゆく様子を見上げている、そんな情景を描いたものです。今日のような雨の中を来てくださったお客様への感謝の気持ちも込めて使っています」

「もちろん陶器も集めていますよ。師匠から『磁器のようにつるっとしたものばかりそろえても面白くない。備前・萩・唐津などをちりばめてバランスを取りなさい』と教えられました」

「まな板にもこだわっています。お造りはこれ、焼き物はこれ、お肉はこれ、と食材や調理法によって使い分けます。例えば焼き物に使うまな板は、太古より土に埋もれていたと伝わる神代欅(じんだいけやき)のもの。由来のストーリーとともに、カウンター内の作業を楽しんでいただければと思っています。とくに外国のお客様に、日本料理を分かりやすく伝えたい、そんな思いからまな板もバラエティー豊富にそろえています」

なるほど随所に生きる“まんべんなく精神”は、おもてなしの心でもあるのだと実感した。

  • 太庵太庵
    書道家の父の手による扁額(へんがく)。「廓無邉」とは「仕切りのない広々とした心」を意味する言葉。高畑さんはオープン当初からこの気持ちで料理・お客様に向き合う。
  • 太庵、外観太庵、外観
    2011年に初めてミシュランの三つ星を獲得してからおよそ10年、お店ののれんにもハクがついてきた。
  • 太庵
  • 太庵、外観
太庵 高畑均氏

高畑均 たかはた・ひとし
1966年生まれ。高校卒業後、吉兆の創業者である湯木貞一さんからのれんを分けられた大阪の名店「味吉兆」に入店。中谷文雄師匠の下で15年の研鑽を積み、2000年に「太庵」をオープン。11年にはミシュラン三つ星を獲得。

●太庵
大阪市中央区島之内1-21-2
山本松ビル1F
TEL 06-6120-0790
kad7500.gorp.jp

※『Nile’s NILE』2020年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。