懐石料理・二十四節気

懐石料理は何よりも「季節」を重視する。桝田兆史さんは、「旬の食材のより繊細なおいしさを見極めながら、2週に1度、コースを組み替える」という。言うなれば、食材を通して「二十四節気」を表現するようなもの。目に美しく、鼻に染み入り、口においしさがとろけるコースの一品一品が、器の醸す季節感と相まって、私たちの心を幸福感で満たしてくれる。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

懐石料理は何よりも「季節」を重視する。桝田兆史さんは、「旬の食材のより繊細なおいしさを見極めながら、2週に1度、コースを組み替える」という。言うなれば、食材を通して「二十四節気」を表現するようなもの。目に美しく、鼻に染み入り、口においしさがとろけるコースの一品一品が、器の醸す季節感と相まって、私たちの心を幸福感で満たしてくれる。

桝田、八寸
独活(うど)のきんぴら、花山葵のおひたし、新じゃがの自家製蕗味噌和え。横長の大きな伊賀焼のお皿にズラリ、二人分の口取りを並べた八寸は「桝田」のアイコン。繊細な美しさが映える。

桝田兆史さんが料理人を志したのは高校2年生の頃。俳優の萩原健一さんが小心で純朴な板前を演じたテレビドラマ『前略おふくろ様』の世界に憧れてのこととか。

もちろん現実は、憧れだけでやっていけるほど甘くない。辻調理師専門学校を経て入ったリーガロイヤルホテルの「吉兆」(現・神戸吉兆)では、厳しい修業の日々。それでも「日本一の料亭で働かせてもらっている」誇りを胸に頑張り、追いまわしから漬物や煮方、八寸場、造りの二番手と順調に“出世”し、5年目には焼き物や揚げ物の一番上の仕事をさせてもらえるようになったという。

「その頃ですね、ぼちぼち店を移るのもいいかなと考え始めたのは。実は前に先輩に連れられて行った京都の割烹の雰囲気に引かれるものがあって、次はカウンタースタイルのお店で働いてみたいと思っていたんです。それでミナミの榎里という割烹を紹介していただきました」

二番手で入った桝田さんは、最初は相当戸惑ったようだ。
「そもそもコース料理ではなく、メニューはすべてアラカルト。料理を準備しておくことはできず、接客しながらおすすめを提案するなど、当意即妙の対応が必要です。加えてお客様は、接待とか同伴の方が多いので、スピードが求められます。とくに2年目に料理長になってからはバブル絶頂期でもあり、目の回る忙しさでした」

そうして「いつの間にか15年」経った頃、女将さんがご高齢で引退し、店を閉めることになった。それを機に桝田さんは、独立を決めた。

桝田、ハマグリとコゴミのお椀
ハマグリとコゴミのお椀。下に蓬豆腐が隠れ、上には独活と木の芽が散る。ふたの裏に描かれた桜の蒔絵とともに、まさに春到来の情緒が感じられる。
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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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