El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1)

古代ローマ時代にイベリア半島に伝わったと言われる生ハムは、基本的な製法は変わらないまま、スペインでは動物性食品の最高峰として存在を維持。そのかぐわしさと食感は、美食家たちを魅了してやまない。

Photo Chiyoshi Suga  Text Chiyoshi Suga

古代ローマ時代にイベリア半島に伝わったと言われる生ハムは、基本的な製法は変わらないまま、スペインでは動物性食品の最高峰として存在を維持。そのかぐわしさと食感は、美食家たちを魅了してやまない。

デエサを走り回り、ベジョータを貪り食べるイベリコ種の豚たち。

スペインにおける生ハムの歴史は古く、ローマ帝国の属州だった時代までさかのぼるとされ、ローマの地理学者ストラボンは紀元前58年に著した『地誌』の中で「イベリア半島は、ドングリを食べてまるまる太った豚を産し、その生ハムの味は格別である」と述べている。

ドングリ、すなわちベジョータである。放牧地にはエンシナ(セイヨウヒイラギ)やアルコルノケ(コルクガシ)、そしてケヒゴ(フユナラ)が多い。このような不飽和脂肪酸を多く含んだベジョータを食べて育つと同時に、放牧による豊富な運動量からイベリコ豚の肉質は赤身に脂が差し込み「サシ」の入ったものとなる。これらから作られた生ハムこそ「ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ」と呼ばれる。しかもオリーブオイルに匹敵する不飽和脂肪酸を含む優れた健康食品でもある。

モンタネラと呼ばれる放牧は10月に始まり、3月頃まで続き、この間に屠と畜ちくされる。十分な大きさに育たない豚は飼料を与えられ「デ・セボ・デ・カンポ」と呼ばれる。一方、飼料だけで育ったものは「デ・セボ」と呼ばれ、通年屠畜が可能となる。

主な産地はウエルバ県のハブゴ、サラマンカ近郊のギフエロ、エストレマドゥラ県のモンタンチェスなどで、他方、白豚から作られた「ハモン・セラーノ」の主な産地はテルエルやグラナダの背後に聳そびえるシエラ・ネバダの南斜面で地中海に面したアルプハラのトレベレスなどが知られ、原産地呼称に登録されている。

  • El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1) El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1)
    (左)コルトと呼ばれる生ハムのカット。部位によって味わいも異なる。(右)ハブゴの工場で、青カビに覆われた熟成中のハモン。
  • El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1) El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1)
    (左)ナイフと併せ必須の道具は、生ハムを固定する器具ハモネロ。(右)チョリソの熟成も生ハムと同様に行われる。
  • El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1) El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1)
    (左)マサと呼ばれる上部からカットしていくと寛骨に当たる。(右)工場では空間の有効化と管理しやすいフレーム。
  • El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1)
  • El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1)
  • El hermoso mundo del Jamón Ibérico (1)
盛り付けられた生ハムにサシが見える。花のように盛り付ける人も。

後半に続く。

▼関連記事
El hermoso mundo del Jamón Ibérico (2) はこちら

1 2
ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。