半世紀の眠りから覚めた時の息吹

130周年という節目の今年、念願だった機械式掛け時計が復活したセイコー。「世代を超えて代々受け継がれる環境にも優しい時計」というコンセプトの下に開発されたデコール・セイコー「息吹」の世界観を堪能したい。

Text Yasushi Matsuami

130周年という節目の今年、念願だった機械式掛け時計が復活したセイコー。「世代を超えて代々受け継がれる環境にも優しい時計」というコンセプトの下に開発されたデコール・セイコー「息吹」の世界観を堪能したい。

  • 天童木工ならではのプライウッド技術が光る 天童木工ならではのプライウッド技術が光る
    木枠は、背の部分が弧を描く、シンプルながら個性的で洗練されたフォルム。天童木工ならではのプライウッド技術が光る。
  • 熟練技術者の手作業で組み立て、調整が行われる 熟練技術者の手作業で組み立て、調整が行われる
    半世紀ぶりに開発された自社設計・製造のムーブメント。最先端技術を用いてパーツ製作などを進める一方、熟練技術者の手作業で組み立て、調整が行われる。
  • 創業時のシンボルマーク「丸角S マーク」 創業時のシンボルマーク「丸角S マーク」
    振り子の水平を確認するための録見飾り板には、創業時のシンボルマーク「丸角S マーク」をあしらった。
  • アラビア数字のアワーマーカーは、印刷を二度重ね アラビア数字のアワーマーカーは、印刷を二度重ね
    アラビア数字のアワーマーカーは、印刷を二度重ねし、さりげない立体感と視認性の高さを実現。
  • 天童木工ならではのプライウッド技術が光る
  • 熟練技術者の手作業で組み立て、調整が行われる
  • 創業時のシンボルマーク「丸角S マーク」
  • アラビア数字のアワーマーカーは、印刷を二度重ね

鍵でゼンマイを巻き上げると、振り子が約1.3秒周期で動き出し、カチカチと心地よい音を響かせながら、ゆったりと時を刻む。オフホワイトの文字板に配されたユニバーサルデザインフォントのアワーマーカーは、二度重ねによる厚塗り印刷によって、自然な存在感を主張。時分針は、明治時代のものを元に、指先で回しやすい先端形状に仕上げられた。水平を取るために振り子の下端奥に取り付けた録見飾り板には、創業当時のシンボルである「丸角Sマーク」もあしらわれている。

外装の木枠は、背の部分が大きく弧を描く形状を採用した。ウォルナットの温かみのある質感と相まって、落ち着きがありながら、洗練されたモダンな印象を醸し出す。天童木工がこれを手がけた。1940年の創業以来、薄手の木材を積層し、曲げて成形するプライウッド家具のスペシャリストとして国内外で高く評価され、日本のインダストリアルデザインのパイオニア的存在である柳宗理や、丹下健三、黒川紀章らのアーキテクトとのコラボレーションでも知られている。あえて無垢材を使わず、成形合板製としたのには、美しい外観の実現だけでなく、木材の無駄を排するサステナブルな配慮があった点も特筆したい。

端正で飽きがこず、クラシックにしてモダンなたたずまい。そこに秘めた掛け時計初号機へのリスペクトとサステナブルな思い。自宅リビングで、半世紀の眠りから覚めた時の〝息吹〞を、心ゆくまで味わいたい。

●セイコータイムクリエーション 
TEL 0120-315-474
www.seiko-stc.co.jp/

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。