61歳のモノローグ F.P.JOURN

フランソワ‐ポール・ジュルヌが自身初の直営店を東京・南青山にオープンして15年が経過した。40代半ばだった彼は、還暦を超えてなお意気軒昂。時計づくりにかける変わらぬ情熱と、人生の終盤を視野に入れた、さらなる進化のシナリオ……胸の内を去来する思いを問わず語りで。

Photo TONY TANIUCH、Masahiro Goda Text Junko Chiba

フランソワ‐ポール・ジュルヌが自身初の直営店を東京・南青山にオープンして15年が経過した。40代半ばだった彼は、還暦を超えてなお意気軒昂。時計づくりにかける変わらぬ情熱と、人生の終盤を視野に入れた、さらなる進化のシナリオ……胸の内を去来する思いを問わず語りで。

時計史に新たな1ページを開く挑戦

クロノグラフ・モノプッシャーラトラパンテ
直径44mm、厚さ12.10mmのケースのラインスポーツに新たに加わったクロノグラフ・モノプッシャーラトラパンテ。素材として新たに採用されたマット仕上げのRGがケースとブレスレットを華やかに彩る。裏側からは、精度の高さを物語る美しいムーブメントを垣間見ることができる。
手巻き、ケース径44mm、RGケース×RGブレスレット、10,108,800円

トゥールビヨン・スヴランの誕生から5年後、ジュルヌはその技術を「トゥールビヨン・スヴラン・デッド・セコンド」に昇華。さらに2012年には、スヴラン・コレクションに「クロノメーター・オプティマム」を発表。高精度を担う複数の機構を一つの時計に組み込んだ。

また2006年には、正時を鐘の音で知らせるソヌリ機構とミニッツリピーター機構を組み合わせた「完璧無比のグランソヌリ」とも称すべき「ソヌリ・スヴレンヌ」を発表。独立以来20年にわたって、ジュルヌは時計史に新たな一ページを開く挑戦を、休みなく続けている。

生涯、独立時計師

メカニズムは古典を模範としながらも、今までにない方法で動かす、それが私の時計づくりの美学です。シャネルの資本が入る今後も、自分の好きなものを自由につくり続けます。

2018年は、ラインスポーツに新たなモデルとしてクロノグラフ・モノプッシャーラトラパンテが加わりました。素材はプラチナ、ローズゴールド、チタンの3タイプ。もちろん、自社開発の新ムーブメントを搭載した自信作です。またクラシックラインでは、コレクションをどんどん刷新します。

それと2019年はトゥールビヨン・スヴランの20周年を記念して新しいモデルを出します。あとクロノメーター・レゾナンスが誕生20年を迎える2020年には、より精度の高い複雑なムーブメントを搭載した新モデルのほか、天文時計の複雑さを有したグランドコンプリケーションも発表予定です。

でも私は、将来のモデルについてはあまり考え過ぎないようにしています。頭に浮かんだ新しいプロジェクトに100%の力を注ぎたい。今すでに向こう3~4年の開発計画があるので、その先を考えるのは2年後くらいでしょうか。

生涯、独立時計師。グループ企業に“身売り”する気は毛頭なく、今後も“やりたいことリスト”に従って、技術を追求していきます。私のクリエイティビティーは枯れない泉のようなもの。人生の最後まで働き続けますよ。

●F.P.ジュルヌ 東京ブティック TEL 03-5468-0931

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。