航海による海外進出が国益を大きく左右した18世紀、高精度の航海用マリンクロノメーターの開発が急務となっていた。当時、時計の進化を担ったのは、スイスではなく、大英帝国の時計師たちだった。
そんな中で、傑出した存在となった時計師がジョン・アーノルドである。彼はマリンクロノメーターの開発に大きな功績を残したほか、現代の時計につながる数々の特許技術を開発。また時の英国王ジョージ3世の目に留まり、王侯貴族のために贅を尽くしたモデルも多数製作している。後に息子のロジャーも仕事に加わり、事業の拡大を進めることになる。
非凡なマニュファクチュールとしてのプライド
そのDNAを受け継ぎ、現代によみがえったハイエンドウォッチブランドが、アーノルド&サンである。スイス時計産業の中心地であるラ・ショー・ド・フォンに工房を構えながら、往年の英国時計からのインスピレーションを形にしたモデルを発表。
多くの時計ブランドが、同じキャリバーをいくつかのモデルに搭載する中で、“1モデル・1ムーブメント”というポリシーを掲げている。自社で開発・製造を行う非凡なマニュファクチュールとしてのプライドが、そこから垣間見られる。
ブランドの可能性を広げる、モダンな洗練をまとった2モデル
「ロイヤル・コレクション」と「インストゥルメント・コレクション」の2ラインがあり、前者は王侯貴族のために製作した時計を、後者は父子が開発した航海用マリンクロノメーターを着想源としている。
ロイヤル・コレクション 「ネビュラ」のダイヤモンドモデル
「ロイヤル・コレクション」の中から、まず紹介するのが「ネビュラ」のダイヤモンドモデルだ。
「ネビュラ」とは星雲の意味だが、立体感に富んだスケルトンムーブメントは、完璧なシンメトリー設計となっており、恒星が爆発した後、宇宙空間に広がる星雲を彷彿させる。
往年の英国時計に用いられた二等辺三角形スタイルの7個のブリッジも見逃せない。18Kレッドゴールドケースを採用し、ベゼルにセットされた90個のダイヤモンドは恒星のごとき輝きを放ち、ホワイトカーフのストラップはエレガントさをかき立てる。個性的なラグジュアリーさを求める男女のニーズに応えるものだろう。
インストゥルメント・コレクション 「タイム・ピラミッド-ブラックエディション」
「インストゥルメント・コレクション」からは、「タイム・ピラミッド-ブラックエディション」を紹介したい。
スケルトンムーブメントの左右に香箱を備えたダブルバレル構造で、それぞれにパワーリザーブインジケーターを備えたシンメトリーなデザインが印象的。
これは、ジョンと息子のロジャーが200年以上前に製作したレギュレーターと英国のピラミッド形の部品構成を持つスケルトン・レギュレーター・クロックが、インスピレーションソースとなっている。クラシックなイメージの既存モデルとは打って変わり、ブラックケースにローズゴールドトーンのコンポーネンツを採用することで、精悍なスポーティーラグジュアリー感にあふれている。
往年の英国時計の美質を受け継ぎながら、モダンな洗練をまとった2モデルが、このブランドの可能性を広げている。
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※『Nile’s NILE』2019年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています