風土・風景ごと食す

「能登にはまだまだ知らない食材がある」と言う平田明珠氏は、日々、野山や海辺を歩き、地元の人々と交流する。その中で、“眠っている食材”を発見しては、風土・風景をも盛り込んで料理する。「自分にしかできない“能登料理”」をどこまでも追求する料理人である。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

「能登にはまだまだ知らない食材がある」と言う平田明珠氏は、日々、野山や海辺を歩き、地元の人々と交流する。その中で、“眠っている食材”を発見しては、風土・風景をも盛り込んで料理する。「自分にしかできない“能登料理”」をどこまでも追求する料理人である。

ヴィラ・デラ・パーチェ、鹿肉は秋口に収獲した果物のソース添え
鹿肉は秋口に収獲した果物のソース添え。季節がミスマッチのようだが、「能登には発酵や加工の食文化があり、冬場に秋に収穫した食材を食べることが多い。能登の暮らしや文化を取り入れることで季節感を表現したい」という。

こうして平田氏がたどり着いたのが、「地元で眠っている食材を探して回り、そこで見た景色を含めて料理をする」ことである。

「だんだんとただおいしいと感じるだけではなく、能登の自然をそのまま味わってもらえるような料理を作ることを目指すようになりました」

能登では通年、アオリイカ、アカイカ、コウイカなどイカが獲れる。そのため、イカでスペシャリテを作りたいと考えたのが「里海の皿」だ。アオリイカの身と、ラルドディコロナータという豚の背脂の生ハムと七尾のおぼろ昆布を三層にして巻き上げた。

鹿をローストした 「里山の皿」は、ナツハゼというブルーベリーに似た自生の実を赤ワインで漬けて作ったジャムと、能登島の塩を添えている。付け合わせは、自然薯のムカゴをピュレして冷まし、固めて焼き上げたものや、ジビエの出汁で炊き、香ばしく焼いた源助大根、タネツケバナという野草だ。

2皿を食して思う、野趣あふれる極旨の“能登料理”は、確かに平田氏にしか作れないものだと。

ヴィラ・デラ・パーチェ 平田明珠氏

平田明珠 ひらた・めいじゅ
1986年東京都生まれ。大学卒業後、一般企業に勤めた後、都内イタリア料理店で修業。2016年に石川県七尾市に移住。「ヴィラ・デラ・パーチェ」をオープン。生産者と料理人を結ぶ「能登F-Fネットワーク」の理事を務める。

●ヴィラ・デラ・パーチェ
石川県七尾市中島町塩津乙は部26-1
TEL 0767-88-9017
villadellapace-nanao.com

※ヴィラ・デラ・パーチェは白馬町から中島町の現地に移転しました
※『Nile’s NILE』2020年3月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

1 2 3
ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。