世界のベストレストラン50を読み解く

21年目を迎える「世界のべストレストラン50」。食のアカデミー賞とも称される、華やかなアワードは、世界のガストロノミー界の潮流を表しており、そのランキングからトレンドが見えてくる。さらに昨今はランキングにとどまらず、ダイバーシティー、地方創生、持続可能性といったSDG’sな側面も強調されてきている。そうした意識を持って俯瞰してみると新たな食の世界地図が見えてくる。

Text Hiroko Komatsu

21年目を迎える「世界のべストレストラン50」。食のアカデミー賞とも称される、華やかなアワードは、世界のガストロノミー界の潮流を表しており、そのランキングからトレンドが見えてくる。さらに昨今はランキングにとどまらず、ダイバーシティー、地方創生、持続可能性といったSDG’sな側面も強調されてきている。そうした意識を持って俯瞰してみると新たな食の世界地図が見えてくる。

トレサンド スタジオ
「トレサンド スタジオ」の料理。熟したバナナとスモークトマトのチャツネを使用したイノベーティブでアーティスティック。日本にインスパイアされた部分も多いそうだ。

ベスト50の地域創生の側面

さらに、ベストレストラン史上初のトピックスといえば、ドバイから2軒がニューエントリーしたことだ。これまでの長い歴史の中で中東からの入賞はなかったことを考えると、これもまた、今回のアワードのなかで着目すべき大きなポイントだろう。なかでも、「トレサンド スタジオ」のいきない11位ランクインは誰もが驚いたはずだ。昨年まで美食のデスティネーションとは考えられていなかったドバイが、いきなりフーディーの標的と化したのだから。が、実はこれは、一昨年、ミドルイースト&ノースアフリカアワードが設立され、その効果が早くも表れた証しといえるだろう。現在の南米勢の活躍も、11年にサウスアメリカアワードの設立で加速したことといい、「ベスト50」には食による地域創生の側面があり、これは大きな社会貢献でもあるのだ。

テーブル バイ ブルーノ ベルジュ
「テーブル バイ ブルーノ ベルジュ」の一皿。小イカにソースを添えた美しい一皿。躍進の理由には、過去一年、たくさんのコラボレーションをこなしてきたことも挙げられると言われている。

ニューエントリーと新旧交代

先述の通り、評議員の1/3が毎年入れ替わるシステムをとっているため、「ベスト50」では順位の入れ替わりが激しくなり、それが面白さにもつながっている。今年はドバイを含む12軒がニューエントリーしたわけだが、フランス、イギリス、タイ、コロンビア、日本と広範囲な国からそれらが出ている。なかでも一つ印象的だったのは、フランスの「テーブル バイ ブルーノ ベルジュ」。ハイエストニューエントリー賞を受賞したこちらの店も、去年まで100位に入っていなかった。それが、いきなりの11位。独学で学んだフランス人シェフがシンプルで季節感のある、カジュアルな料理を提供し、パリの美食家の間で熱狂的なファンを獲得したとのこと。36位「プレニチュード」、48位「ラグルヌイエーレ」とそのほか2店舗のニューエントリーもあり、フランスも勢いがある。逆にフランスが誇る三つ星レストランのシェフ、「ルドワイヤン」や「アルページュ」は51位から100位に後退した。これもまた、時代性の一つであるのかもしれない。

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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