受け継がれる170年の出汁

上等な酒と鯨のさえずり®、たこ甘露煮。この三つが、おでん屋「たこ梅」の名物だ。1844年に初代の岡田梅次郎が創業してから、道頓掘で最も長い174年の歴史を持つ。開高健や池波正太郎らが通い、作品にも描いた当時そのままの店内に、太平洋戦争もリーマンショックも乗り越え、脈々と受け継がれてきた味がある。

Photo Masahiro Goda Text Rie Nakajima

上等な酒と鯨のさえずり®、たこ甘露煮。この三つが、おでん屋「たこ梅」の名物だ。1844年に初代の岡田梅次郎が創業してから、道頓掘で最も長い174年の歴史を持つ。開高健や池波正太郎らが通い、作品にも描いた当時そのままの店内に、太平洋戦争もリーマンショックも乗り越え、脈々と受け継がれてきた味がある。

コの字形のあめ色になったヒノキのカウンターの中で“鍋番”をする店長の和田訓行氏
コの字形のあめ色になったヒノキのカウンターの中で“鍋番”をする店長の和田訓行氏。初代の梅次郎がカウンター越しに手を伸ばし、酒やアテを四方八方に供する姿がたこに似ていたというのが店名の由来だ。

「かんとだき」という名の由来は、中国・広東省の人がごった煮を食べているものを見て、アレンジしたからだという説もある。広東省の「カントンだき」を、大阪風に縮めて「かんとだき」。諸説あるが、単純に関東のおでんを大阪に持ってきたわけではないので、ちくわぶやはんぺんはない。

たこ甘露煮は、真蛸(まだこ)を伝統の出汁で炊いた、店に来た客が必ず食べるという定番。
江戸時代、いい酒を上々に燗(かん)をつけて出す店のことを「上燗屋」といい、梅次郎が上燗屋として店を始めたことから以来、酒にもこだわっている。西宮の宮水と兵庫県産の山田錦から醸された純米酒を、ハンドメイドの錫(すず)のタンポで湯煎し、じっくりと燗をつけていく。錫の持つイオンでまろやかさを増した酒が、関東煮のやさしい味わいにぴたりと合う。

鯨のさえずり®は今は900円だが、30~40年前の一時期は1本1500円の超高級品だった。普通のサラリーマンには手の出せない値段だったからこそ、「たこ梅で食べられるようになれば一人前や」というステータスになったという。

今は店長の和田氏の采配で、若い世代も積極的に招き入れ、卵や大根など安くて旨い種から味わってもらう。スタイルは変わっても、決して変えないのは店の味だ。

「親が子を連れ、子が成長してその子を連れてと、3世代、4世代で来ていただいているお客様が多いのがたこ梅です。15年ぶりに来たお客様にも『そう、この味や』と言ってもらえれば勝ち。そこは、受け継いでいかなあかんな、と思うてます」

●たこ梅本店
大阪市中央区道頓堀1-1-8
TEL 06-6211-6201

※『Nile’s NILE』2018年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

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