楯の川酒造が挑む新たな高精白日本酒

「高精白」×「熟成」をテーマに、日本酒の新しい領域に踏み込んだ、新シリーズ・涅槃(ねはん)の第1弾「涅槃 黒 2020」がこのほどデビューした。
1年間氷温下で瓶内熟成させることで、高精白日本酒ならではの完成度と繊細さはそのままに、時の流れとともに現れる、深みとまろやかさを備えた一本に仕上がっている。
無限大の口福とともに、今まで知らなかった、日本酒の新しい魅力を教えてくれる。

Text Hiroko Komatsu

「高精白」×「熟成」をテーマに、日本酒の新しい領域に踏み込んだ、新シリーズ・涅槃(ねはん)の第1弾「涅槃 黒 2020」がこのほどデビューした。
1年間氷温下で瓶内熟成させることで、高精白日本酒ならではの完成度と繊細さはそのままに、時の流れとともに現れる、深みとまろやかさを備えた一本に仕上がっている。
無限大の口福とともに、今まで知らなかった、日本酒の新しい魅力を教えてくれる。

涅槃 黒 2020
白く上品なカートンに入った「涅槃 黒 2020」は、その味わいも繊細で落ち着いている。

当代で6代目を迎える「楯の川酒造」は、山形・庄内の豊かな風土の中で脈々と酒造りを続けてきた。創業は天保3(1832)年、190年前のこと。水質の良さに驚いた上杉藩家臣に酒造りを勧められたことがその始まりだそうだ。以来、その伝統を守り、庄内の恵まれた自然を大切にしながらも、革新的な技術を次々取り入れることで、日本酒業界にインパクトを与えている。

仕込み蔵
新設された蔵。その美しさは、モダンなギャラリーを思わせるほど。

20歳で蔵を引き継ぎ、現在43歳となった6代目・佐藤淳平。彼はあくまでもエレガントで繊細な日本酒を目指し、蔵で醸す酒は純米大吟醸(精米歩合50%以下)と決めている。なかでも米を磨き抜いた20%以下の高精白に注力し、ついに1%まで磨くという、当時誰もなし得なかった挑戦を成功させた。1%精米を実現した「純米大吟醸 光明 出羽燦々」の価格は10万円(税抜)と、日本酒の価値向上へも大きく貢献。米ぬかも家畜のえさにしたり、米粉として卸し、製菓材料にして有効利用したりと環境問題にも真摯に向き合っている。

そして楯の川酒造は、またひとつ日本酒の新しい価値を生み出した。どうしても新酒の若々しさが珍重されがちな日本酒だが、近年熟成酒への注目度も上がっている。今回、高精白日本酒のさらなる価値向上に向け、熟成酒に挑戦。氷温下で1年熟成し、コクやまろやかさをまとった日本酒を生み出したのだ。

使用している酒米は、惣兵衛早生という庄内地方の在来品種。幻の酒米とも称される「亀の尾」の親にあたる品種で、6代目が契約農家と二人三脚で復活させたものだ。品種改良前の米であることから、背丈が高いため倒れやすく、育てにくい。さらに収量も他品種に比べ少ないが、先人たちが育んできた歴史と文化を後世に伝えるためには手間を惜しまなかった。現在、使用している蔵は全国で楯の川酒造のみだという。

その惣兵衛早生を18%まで磨き、仕込み、1年間寝かせたものが「涅槃 黒 2020」だ。2020の文字は米の収穫年を表している。これまで惣兵衛早生では50%まで磨いた「楯野川 純米大吟醸 Shield 惣兵衛早生」が好評を博していたが、高精白は、まったく新しい挑戦だった。現在主流となっている酒米の派手さやボリューム感はないものの、在来米らしい柔らかで落ち着いたたたずまいゆえ、新酒のころは素朴な味わいに仕上がっていた。それを瓶内で1年熟成させることで、花のような香りとピュアな甘みをまとい、時間経過の中で生まれた奥行きとまろみが感じられる、これまでにない魅力を備えた新しいジャンルの日本酒になった。

18%まで磨いた米
18%まで磨いた清らかな酒米・惣兵衛早生。

おすすめのペアリングは、同じく熟成を重ねた食品だという。熟成期間が長いミモレットなどは最高の相性を見せる。酒盃を手に、搾りたてはどのような味わいだったのだろうかと想像したり、さらに1年寝かすとどんな味わいに変化するのかなど、経年変化を待つ楽しみも味わえる。まさにライスビンテージの個性を堪能できる新しい日本酒だ。

この6月に販売された「涅槃 黒 2020」。至高の酒の登場に拍手を送りたい。

●問い合わせ 楯の川酒造 TEL0234-52-2323

ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。