小学校の作文では「将来は料理人になる」と書いた。モノづくりが好きで、仕事で両親の帰宅が遅いと、自分で卵焼きを焼いて食べるのが当たり前だった。小さい頃は好き嫌いが多かったが、瓢亭玉子と朝がゆは大好きで、特に食欲のない夏はその二つばかり食べたという。。
見識を広げるために東京の大学へ行き、卒業後は父親の勧めで金沢の料亭「つる幸」へ。洗い場や飯炊きから始め、揚物の担当までして京都に帰った。。
450年の歴史と人に囲まれ、重責の中でも自然体が光るのは、自身も稽古を積んできた茶道の影響もあるだろう。「お料理の出す順番を意識したり、利久箸を使ったりして、食と一緒に茶文化の発信もしたいと考えています」と襟を正す。
「京都と日比谷店に通う常連のお客様も多いので、献立がかぶらないように毎回、お料理を変えます。この1年ですごく献立がたまりました」
伝統はもちろん、15代目その人の料理を味わいに、人々は今日も「瓢亭」へと足を運ぶ。
髙橋義弘
1974年京都府生まれ。「瓢亭」14代当主の長男として育ち、大学を卒業後、石川県金沢市の料亭「つる幸」で修業を積む。京都に戻ってからは父とともに調理場に立ち、2015年に社長(当主)に。
●南禅寺 瓢亭 日比谷店
東京都千代田区有楽町1-1-2
東京ミッドタウン日比谷3F
TEL 03-6811-2303
hyotei.co.jp/tokyo
※『Nile’s NILE』2019年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています