鎌倉モダンの源流を行く 中編

戦争や震災を経てもなおモダンな姿を今に残す、通称「鎌倉洋館のビッグ3」を巡る散歩。
鎌倉文学館に続いて、旧華頂宮邸へ向かった。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

戦争や震災を経てもなおモダンな姿を今に残す、通称「鎌倉洋館のビッグ3」を巡る散歩。
鎌倉文学館に続いて、旧華頂宮邸へ向かった。

旧華頂宮邸
古典的なハーフティンバースタイルの洋館。主屋の背後に、整然としたフランス式庭園が広がる。正面もいいが、こちら側から見た外観がまた格別だ。当初は常住としていたが、後に一家が東京に戻ってからは、鎌倉別邸となった。庭園は一般公開されている。なお施設の維持・修理のため、寄付金を募集している。訪れた方は、庭園入り口に設置されている募金箱にお志を……!

旧華頂宮邸

鎌倉文学館の次に向かったのは、「旧華頂宮邸(きゅう かちょうのみや てい)」。浄明寺2丁目。竹の庭で知られる報国寺の先、静かな谷戸にあるこの邸は、華頂博信侯爵が1929(昭和4)年に建てた洋館。「端正な」という形容詞がよく似合う。
銅板葺(ふ)きの淡いグリーンの屋根、破風や屋根窓のついた三角屋根、華やかな破風飾りなどが特徴的。整然とした感じは、背後のフランス式庭園や内部の意匠にも通じる。玄関ホールの小ヴォールトと呼ばれるアーチ型の天井や、洋室のマントルピースなど、格調高い部屋の設(しつら)えに目を見張る。往時の華族の華やかな暮らしを彷彿(ほうふつ)とする素晴らしさだ。
また、庭園奥には、「無為庵(むいあん)」という茶室を含む和風建物がある。これは昭和46年に当時の所有者松崎氏が東京・上大崎から移築したもので、造られたのは昭和初期以前。洋と和の趣を楽しめるスポットである。

  • 旧華頂宮邸
    庭に続く石段に洋の雅(みやび)が感じられる。
  • 旧華頂宮邸
    小さなヴォールト型の天井がユニーク。
  • 旧華頂宮邸
    庭を望むサンルームにはぬくもりが満ちて。
  • 旧華頂宮邸
    シャンデリアにも気品が漂う。
  • 旧華頂宮邸
    食堂の大きなテーブル。食も会話も進みそう。
  • 旧華頂宮邸
    2階には和室もあり、心が落ち着く。
旧華頂宮邸
1階バルコニーから、幾何学的でシンメトリーなフランス式庭園を望む。豊かな緑と、バラやアジサイなど、四季折々の花が楽しめる。加えて空が広く、中でも外でも気持ちのいい時間が流れる。

●旧華頂宮邸
神奈川県鎌倉市浄明寺2-6-37
TEL 0467-61-3477
10時〜16時(10月〜3月は15時まで)
休園日 月曜・火曜

鎌倉市景観重要建造物等保全基金

旧華頂宮邸をはじめとした歴史的建造物の維持保全には多くの資金が必要です。

鎌倉市では『鎌倉市景観重要建造物等保全基金』を創設し、ふるさと納税制度による寄附金を受け付けています。貴重な建造物を後世に伝えるため、ぜひご協力をお願いいたします。

鎌倉市ふるさと寄附金ポータルサイト

鎌倉モダンの源流を行く 前編(鎌倉文学館)
鎌倉モダンの源流を行く 中編(旧華頂宮邸)
鎌倉モダンの源流を行く 後編(古我邸)

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

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