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鎌倉モダンの源流を行く 後編

戦争や震災を経てもなおモダンな姿を今に残す、通称「鎌倉洋館のビッグ3」を巡る散歩。
鎌倉文学館、旧華頂宮邸と回り、最後に古我邸へ向かった。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

戦争や震災を経てもなおモダンな姿を今に残す、通称「鎌倉洋館のビッグ3」を巡る散歩。
鎌倉文学館、旧華頂宮邸と回り、最後に古我邸へ向かった。

古我邸
扇が谷の一つの谷戸全体を占めるこの敷地には、かつて興禅寺という寺があった。神奈川県知事・沖守固(おきもりがた)や三菱財閥の岩崎小弥太らを経て、荘清次郎の手に渡る。また、濱口雄幸、近衛文麿ら総理大臣が別荘とするなど、建物の歴史は多くの著名人に彩られている。築100年を迎える2015年にフレンチレストラン・結婚式場として、新たな時間を刻み始めた。地場・相模湾の天然魚や近隣農家の野菜・卵を中心に、厳選された新鮮な食材を使った料理を提供している。

古我邸

そして最後は古我邸へ。ここは1916(大正5)年に三菱系の会社の要職を歴任した実業家・荘清次郎が建てた別邸だ。震災前の数少ない貴重な建物である。
その様式は19世紀アメリカの建築によく見られるシングルスタイル。外壁全体は杮葺 (こけらぶき)で、屋根は西洋風のおしゃれな天然スレート葺き。大正ガラスのはめ込まれた大きな窓が特徴的だ。
この古我邸は現在、フレンチレストラン・結婚式場に姿を変え、またカフェを併設するなど、鎌倉の新名所として人気を集めている。

これにて鎌倉の洋館ビッグ3を巡る散歩は終了。近代建築に漂うノスタルジックにしてロマンチックな雰囲気に栄養を得たのか、心に心地良い充足感が広がった。

  • 古我邸
    大正ガラス越しに見る庭の風景は、陽炎(かげろう)が立ち上るよう。光の屈折がおもしろい。
  • 古我邸
    洋館へのアプローチがまた気持ちいい。この奥にカフェがあり、散歩ついでに立ち寄る地元民も多いようだ。

●古我邸
神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-7-23
TEL 0467-22-2011
kamakura-koga.com

鎌倉モダンの源流を行く 前編(鎌倉文学館)
鎌倉モダンの源流を行く 中編(旧華頂宮邸)
鎌倉モダンの源流を行く 後編(古我邸)

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

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