現代美術と羊
ヘルマン・ニッチェの世界

現代美術家
ホルモン関根

現代美術家
ホルモン関根

美術

ニッチェの目指す作品の意図とその暗喩

ニッチェにはアクション・パフォーマンス以外にも、ペインティング・ パフォーマンスという、赤や紺、茶、濃緑、黒などの絵の具を大きなキャンバスにぶちまける一連の作品群がある。どれも激しい動きから生み出されたタブローは、血のしたたりや肉体の破壊や暴力を彷彿とさせる。一般の人にはとうてい理解できないだろうが、「目指すところは人間がもつあらゆる欲望、残忍性、性癖、狂気などからの解放。それに伴い歓喜から来る覚醒」と彼は言う。それはまた、ヨーロッパ文明に長く根付き、刷り込まれたキリスト教という既成概念や固定観念からの脱却とも受け取れないだろうか? 

ヨーロッパ文化はキリスト教の影響下のゆえ、初めに言葉ありき、の世界観でもある。ゆえに現代美術が存在する価値の一つは、言葉では置き換えられないエネルギーや真実を伝える手段であるとも言えるのだ。

ところで羊はその性格から家族の安泰と平和な暮しに例えられる。羊のような良い年になることを心から願ってやまない。

ホルモン関根 ほるもん・せきね
現代美術家として活動するとともに、自ら異星人キャラ「あおひと君」に扮しパフォーマーとしてオペラから現代アートイベントなどで演じる。作品・パフォーマーとして欧米10カ国で発表、好評を得る。現在、展覧会ポータルサイト「Tokyo Live & Exhibits」をSNSアート作品として運営する。
tokyo-live-exhibits.com/

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※『Nile’s NILE』2024年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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