“心地よい”と向き合うプロセス

高級マンションのリフォーム・リノベーションに特化した建築設計事務所、カガミ建築計画を主宰する各務謙司さん。各務さんに、“心地よい家”をかなえるために大切していることを尋ねると、興味深い答えが返ってきた。好きなものばかりが集まった空間が、必ずしも心地よいとは限らないと言うのだ。

Photo Masahiro Goda  Text Asuka Kobata

高級マンションのリフォーム・リノベーションに特化した建築設計事務所、カガミ建築計画を主宰する各務謙司さん。各務さんに、“心地よい家”をかなえるために大切していることを尋ねると、興味深い答えが返ってきた。好きなものばかりが集まった空間が、必ずしも心地よいとは限らないと言うのだ。

好みの空間は季節や状況によって変わります。家は一年中暮らしのベースであり、家族と共有する空間も様々な好みが交錯します。全てを統一する必要はありません。住み手の固定観念を揺るがし、一緒に考えることが大切です。シーンを具体的に想像すると理想の空間が浮かびます。好きなものだけでなく、引かれていたものや将来の希望も考えましょう。家具からイメージする方が身体感覚に直結しやすく、置きたい家具を起点に空間づくりをしてみましょう。と述べる。

カガミ建築計画では、間取りについて、キッチンやバスルームなどの設備について、家具についての打ち合わせを月に1回ずつ行い、行ったり来たりすることで徐々に全体のプランをまとめていくのだとか。

「時間をかけることが必要で、打ち合わせも慎重に進める。場所やスタッフのバリエーションを変え、住み手が納得できるまで進めることが心地よさにつながる」と語る各務さん。また、リノベーションにおいては既存の空間を大切にし、ビンテージマンションなどの質の高い要素を残す提案がなされている。建物の歴史や軌跡を尊重しつつ、新たな好みを融合させることで、複雑な味わいが生まれるとの考えだ。

ヨーロッパの石造建築を例に挙げ、「建物の歴史や軌跡を尊重しながら自分の好みを重ね合わせることで生まれるミックススタイルが、居心地のよさにつながる」と述べ、過去と未来を調和させるアプローチの重要性を強調している。

最後に、家を豊かな場にする方法として、自らの感覚を研ぎ澄ませるために家具やアートの購入を提案。一定の金額を覚悟して気合を入れて見に行くことで、心地よさに向き合う時間になり、家族と一緒に見に行くことでメンバーそれぞれの心地よさをすり合わせる良い機会にもなるとアドバイスしている。

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    住み手が好きだというブルーは、ラグやラウンジチェアの張り地、クッションなどでさりげなく取り入れている。左の特注の鉄フレーム扉が、素材感のある空間のアクセントとなっている。
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    設計に約1年を費やし何度も検討を重ねることで、フローリングやタイル、左官材、大理石など多様な素材の共演をかなえた。
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●カガミ建築計画
東京都港区白金台3-12-2-303
TEL 03-5789-4146
kagami-reform.com

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※『Nile’s NILE』2024年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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