梨、風が吹く丘の上で

梨の名産地、鳥取県広岡。肥沃な赤土に、日本海から吹く風、日当たりがよく、水はけのいい傾斜地と、梨がおいしく育つ環境がそろっている。この地で約50年、果物を露地栽培しているのが広岡農場だ。

Photo TONY TANIUCHI  Text Rie Nakajima

梨の名産地、鳥取県広岡。肥沃な赤土に、日本海から吹く風、日当たりがよく、水はけのいい傾斜地と、梨がおいしく育つ環境がそろっている。この地で約50年、果物を露地栽培しているのが広岡農場だ。

広岡農場
広岡の丘陵地は、風通しが抜群であり、標高が高く昼夜の寒暖差があるのも、果樹にとっては最適だ。水分と酸味、甘みのバランスがいいおいしい梨が育つ。
(左)広岡農場の漆原泰雄さん
生産者を紹介してくれた「惣和会」の料理人たち(左から、米子市の割烹「きさら」の料理長の武部貴紘さん、鳥取市内で鰻・郷恩料理「梅乃井」を営む「惣和会」会長の宮﨑博士さん、四季彩「かしも」の店主である樫本智史さん、日本料理「Chikuma」の吉村規嗣さん)
(右)「かんだ」神田裕行さん。

鳥取市の中心部から南へ約6kmに位置し、海抜90mの丘陵地にある広岡は、全国の二十世紀梨の生産量の約半分を占める鳥取県の中でも、梨の名産地として知られている。この地ならではの肥沃な赤土に、日本海から吹く風、日当たりがよく、水はけのいい傾斜地と、梨がおいしく育つ環境がそろう。
この地で約50年、梨や桃、イチジクなどの果物を露地栽培するのが広岡農場だ。梨は8月の夏さやかに始まり、秀玉(しゅうぎょく)、秋栄(あきばえ)、新甘泉(しんかんせん)、二十世紀、あきづき、新興(しんこう)、王秋(おうしゅう)と1月下旬まで常に実る。

「どの果物も木に実をつけた状態で自然完熟させています。おいしく育てた果物を最適な時間に収穫するようにしていて、梨なら朝の5時から9時の間だけとり、その日の午後には各地へ発送しています」と話す、広岡農場の漆原泰雄さん。

梨は安定した大きさや味の果実がとれるようになるまでに、15年もかかるという。老木から接ぎ木して若木を育てながら、25年をめどにうまく世代交代させていく。圃場の整理のために刈った雑草は、堆肥化し有機肥料として土作りに活用している。

さらに水はけのよい傾斜地では、主にイチジクを栽培する。「この白イチジクのバナーネは、自分用に植えてるんです(笑)。イチジクは、新しい枝にはすべて結実するので、前年の枝を枝元から切り戻しておけば、一葉に必ず実が一つなります」とうれしそうな漆原さん。イチジクが好物の神田さんも、興味津々でまだ堅いバナーネの実をもいでいた。

●広岡農場
TEL 0857-53-5308

※『Nile’s NILE』2019年9月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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