山陰の“食のみやこ”、鳥取県は、四季折々の自然と風土によって育まれる食材が実に多彩だ。約240年前から献上品とされていた松葉がにを筆頭とする海産物、江戸時代から産地として知られる和牛などの畜産物、大山の麓に広がる肥沃な黒ぼく土で育つ農産物、さらには鳥取県オリジナルの“幻の酒米”「強力(ごうりき)」を復活させた日本酒など良質な食材がそろう。
そして、今、独自の工夫をすることで、よりおいしく、より新鮮な状態で消費者に届けたいと努力を続ける生産者たちがいる。彼らは、漫然と農産物を作るのではなく、ただ漁に出て魚介をとるのではなく、自分たちが手を加えることで、他にはない旨いものにすることができるのか、日々、試行錯誤している。
こだわりの方法で独自のおいしいものを提供しようとする生産者たちに、ミシュランで12年連続三つ星を獲得し、和食の新しい地平を切り開いてきた元麻布「かんだ」の神田裕行さんとともに会いに行った。
彼らを紹介してくれたのは、鳥取県調理師連合会「惣和会」の料理人たち。普段、店で使っている食材の生産者を中心に、「神田さんをうならすことができる」と考えたものばかりだ。