なお川田さんには「きゅうり」と聞いて思い出すエピソードがある。それは師匠である「日本料理 龍吟」の山本征治さんがきゅうりを例に話してくれた、「素材」と「料理」の違いに関する洞察。
「きゅうりをそのまま誰かにポンと渡したのなら、それは素材です。しかし暑い日にきゅうりをパキッと折って渡し、断面から召し上がって涼をとって欲しい、季節を感じて欲しい……そんな『思い』がのった瞬間、料理になります。じゃあ、きゅうりが茶禅華の料理になる瞬間はどこなのだろう? どんな思いをのせられるだろう? そこを今回は改めて強く見つめました」
鋭敏な感覚できゅうりの小さな声を捉え、それを生かせるよう他の要素と構成した川田さん。きゅうりも、このように生かしてもらって本望に違いない。川田さんのきゅうりへの愛情を強く感じるとともに、料理に対してストイックに向き合う真摯さも表れた3品となった。
川田智也 かわだ・ともや
1982年、栃木県生まれ。「麻布長江」で10年間にわたり四川料理を修業したのち、「日本料理 龍吟」に入門。同台湾店である「祥雲龍吟」の立ち上げから参加し、副料理長を務める。帰国後、2017年2月に「茶禅華」をオープン。『ミシュランガイド東京 2022』では三つ星の評価を得ている。
●茶禅華
東京都港区南麻布4-7-5
TEL 050-3188-8819(予約専用番号)
sazenka.com
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