いいきゅうりは、いい砂丘地で育つ

加賀野菜“加賀太きゅうり”の農地は、昭和45(1970)年ごろに、市街化が進んだ三馬地区から砂丘地の打木地区に移動した。海岸線に隣接する広さ約2.8haの農地で伝統野菜を作り続けているのが、13軒の農家が所属する「加賀太きゅうり部会」だ。

Photo Satoru Seki

加賀野菜“加賀太きゅうり”の農地は、昭和45(1970)年ごろに、市街化が進んだ三馬地区から砂丘地の打木地区に移動した。海岸線に隣接する広さ約2.8haの農地で伝統野菜を作り続けているのが、13軒の農家が所属する「加賀太きゅうり部会」だ。

金沢

JA金沢市 砂丘地集出荷場 加賀太きゅうり部会 部会長、中林圭吾さん
JA金沢市 砂丘地集出荷場 加賀太きゅうり部会 部会長、中林圭吾さん。加賀太きゅうりの生産を始めて12年目を迎える。以前はサラリーマンをしていたが退職し、祖父の代から守り抜かれてきた農地を受け継いだ。

江戸時代、加賀藩によって築かれた城下町金沢には、藩政時代から受け継がれた特産野菜の加賀野菜がいまなお栽培され、市民に愛されている。加賀れんこん、金時草、源助だいこんなど季節感に富んだ15品目があり、そのうちの一つである加賀太きゅうりは、市内の海岸部に位置する打木町で栽培されている。

採れたての断面からは、みずみずしさが伝わってくる
採れたての断面からは、みずみずしさが伝わってくる。

特徴は、まずその大きさ。一般的なきゅうり約5本分の果重で、果長はおおよそ22cmから27cm。果肉は厚いがやわらかく、日持ちが良い。東京市場や京阪神市場へも出荷されるこの伝統野菜は、地元の生産者によって守り継がれている。

「加賀太きゅうりは13軒の農家で、ハウス栽培をしています。毎年、部会で受け継いでいる種をそれぞれの農家に配って、栽培をスタートするんです。けど、個人で育てるのでどうしても、その人の家の子供というか、樹の表情が出てきてしまう。それで、収穫したら一カ所に集めて、全農に大きさや見た目のきれいさなどを基準にランクを付けてもらって出荷する。僕らは少人数なので全員で基準を明確にして作ったものがおいしければ、加賀太きゅうりがおいしいという認知につながるんです」

そう話すのはJA金沢市砂丘地集出荷場 加賀太きゅうり部会の部会長、中林圭吾さん。伝統野菜であるが故に、栽培にあたり何か特別なこだわりがあるのかと思いきや、意外にも重要なのは水の管理だという。

「きゅうりは90%以上が水分でできているので水はとても重要で、それは加賀太きゅうりも一緒なんです。ただ、水を与えすぎてしまうと根っこが腐ってしまうので、適切な量を自分で見つけて管理していくのは何年経っても大きな課題。打木町はもともと砂地で、良く言えば水ハケがいい、悪く言えば水持ちの悪い土地なんですよ。その関係もあって、水の管理には慎重になります」

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ラグジュアリーとは何か?

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