「SOLE ELUNA(太陽と月)」と名付けた2階建てのこの家も、自らの手で設計。四つの部屋を2層にシンメトリーに配置し、東がオフィス、西が住まいとなっている。周囲は庭木に囲まれ、ガラス天井の階段室からは太陽や月の動きが見られるなど、自然を感じる空間だ。「季節の移り変わりを肌で感じながら、オンとオフをシームレスにつないでマイペースに暮らせるこの家は、今の私たちに最適だと思っています」と述べている。
そんな彼らが考える“心地よい家”について、30年前に手がけた初の設計家としての仕事を振り返りながら語ってくれた。イタリアのアパレル業に従事する日本人の夫と、ドイツ人の妻の夫婦が住むその家では、日本の伝統工芸と洋風な趣を絶妙に融合させた空間が広がっていた。「夫人の価値観に驚きました。和と洋を融合させ、手入れの手間を楽しむ姿勢に感銘を受けました」と述べ、家は人生の中心であり、自己表現の場であると強調。自由な発想で自分らしい空間を追求することの重要性を訴えている。
アートにも注力し、アーティストとの交流が想像力に繋がると語り、「アートは住み手のパーソナリティーそのもの。自分らしさを表現してくれる存在だ」と認識している。また、人間は自然の一部であり、自然との関わりを本能的に求めるとし、日常に植物や風、水の流れ、炎の揺らめきを取り入れることを提唱。「この住まいの場合は、部屋ごとに春夏秋冬のテーマを持ち、日本の伝統色で壁を塗装しています」と説明している。
素材選びにも理念があり、自然物と人工物を選択する際には必ず理由を持ち、家の中を移動できるように回遊動線を描く間取りも大切にしているという。また、“ハレとケ”の場を分け、快適で機能的な日常を大切にする一方で、非日常の美しい場を設けることで、豊かな生活を提案している。「多様な居場所があることで、暮らしに変化が生まれ、日常が豊かになると思います。面積が限られていても、庭見の場を設けたり、図書室を造ったりします。大きな部屋よりも二つに分けたり、引き戸で使い分けたりすることで、奥行きやシークエンスを生み出しています」と語り、個性豊かなアプローチで“心地よい家”を実現することへの熱いメッセージを贈っている。
●横堀建築設計事務所
東京都大田区田園調布3-27-6
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※『Nile’s NILE』2024年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています