「袖ひぢて我が手にむすぶ水のおもに天つ星合(ほしあひ)の空を見るかな」
紫式部や清少納言などと並び、中古三十六歌仙に選ばれている藤原長能が詠んだ一首である。袖を濡らし両手ですくった水面に星合、すなわち七夕の天の川が映り、牽牛(けんぎゅう)と織姫との年に一度の逢瀬(おうせ)に思いを致す様が、叙情的に表現されている。夜空を見上げ悠久の時や無限の宇宙に思いを馳せるにとどまらず、自らの手元に切り取った星空にロマンチックな思いを託すことは、平安の昔から行われていた。星と人との普遍的なつながりが、そこから見えてくる。
現代に目を移せば、天体の動きや星空の世界観を極小の空間に閉じ込めたタイムピースは、この流れをくむものかもしれない。「カンパノラ」は、その中でも際立った存在感を示してきた。「時を愉しむ」をテーマに2000年に登場し、独創的なパーペチュアルカレンダーやミニッツリピーターなどの複雑機構をクオーツムーブメントで実現。また“宙空(ちゅうくう)の美”をコンセプトに、宇宙の景観を表現した多層構造文字板や、漆、蒔絵など匠の技を生かした意匠も評価が高い。
これまでにも星空や宇宙との親和性を意識したモデルが「カンパノラ」から数々ラインアップされてきたが、これをさらに進化させ、ロマンあふれる豊かな時間を提供するべく「Be Romantic.」というブランドメッセージが掲げられた。これを具現化した「宙鏡」の2モデルが11月8日に登場した。
まず「エコ・ドライブ 宙鏡」。つやのあるブルーの見返しリング部にリングソーラーセルを備え、わずかな光さえも捉えて発電・駆動するフラッグシップ的な機構、エコ・ドライブ搭載モデルをベースとして、ムーンフェイズを取り囲む6時位置のサブダイヤルに、金属粉を混ぜ込んだ深い青漆で、銀河の星々の瞬く様子を表現した。
もう一つは「グランドコンプリケーション 宙鏡」。クロノグラフ、パーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ、ミニッツリピーターという4大複雑機能を備えたグランドコンプリケーションモデルをベースに、12時位置のムーンフェイズの下、1時から8時位置を横断するように繊細な螺鈿(らでん)細工で銀河の輝きを描き出した。見返しリングには漆の美しい色調で濃淡をつけ、宙のゆらぎを表現した。
2モデルともに、文字盤、見返しリング、ワニ革バンドに至るまで、深遠な宇宙空間を思わせるブルーで統一されている。 12月には「メカニカル 宙鏡」の発売も予定されている。シチズングループ傘下にあるスイスのハイエンドムーブメントサプライヤー、ラ・ジュー・ペレ社製の機械式ムーブメントを搭載し、文字板には伝統工芸士・儀同哲夫(ぎどうてつお)氏の手になる蒔絵によって深いブルーの星雲の揺らめきがもたらされ、プラチナ粉を蒔いて研ぎ出した銀河が横切る。見返しリングも濃紺の漆塗りによってつややかに仕上げられた。
ややもすれば時間に追われ、慌ただしい日々を過ごしがちな現代人こそ、無限の宇宙を時計という空間に閉じ込めたカンパノラ「宙鏡」を身に着けたい。そして時の原点に向き合い、悠久の時の中に身を置くロマンを味わいたい。
カンパノラの最高峰の仕上げを数々手掛けてきた伝統工芸士の儀同哲夫
氏の匠の技と、スイス製機械式ムーブメントとが織りなすハイエンドな世界観を堪能できる。カンパノラ「メカニカルコレクション」では初となるメタルブレスレット仕様。「メカニカルコレクション 宙鏡 NZ0000-58L」自動巻き+手巻き、ケース径42㎜、SSケース×SSブレスレット、日常生活防水、限定150本、1,320,000円、12月5日発売予定。
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