1998年に独立し、翌年には予約が取れないほどの人気を得た原田氏だが、「あれはイタリア料理ではない」という声も当時、あったのも事実だ。そんな声に、原田氏は「引け目はあった。イタリアで修業をしていないコンプレックスで」と話す。
しかし2003年、そんな気持ちを完全に吹っ切る出来事が起きる。イタリアの著名ガイドブックの編集長が東京の主だったイタリアンを講評する雑誌の企画で、1位を獲得したのだ。「これはきちんとしたイタリアン」と、そのガイドブックの編集長が評価した。
「自分は間違えてなかった。そして、自分らしくていい。そう思えました」
そんな原田氏の料理は、年を経るごとに研ぎ澄まされてきている。今回紹介したスッポンの料理も、スッポン自体の味付けや調理法はまさに中華。「おいしいと思うから」と大胆に振り切ることができるのも、自信があってこそ。「今年50歳を迎えるので、そろそろ省エネ運転で」と笑うが、集中すべき箇所を外さないから、他の部分で力を抜ける。そんな達人の域に達した原田氏がどう進化するのか、目が離せない。
原田慎次
1969年栃木県生まれ。調理師学校を経て「ヂーノ」に入り佐竹弘氏のもとで働く。24歳の若さで支店「ジリオーラ」シェフに。1998年、「アロマフレスカ」を独立開業。後に麻布、2010年より銀座に移転する。
●アロマフレスカ
東京都中央区銀座2-6-5
GINZA TRECIOUS12F
TEL 050-5487-2688
ge4u000.gorp.jp
※『Nile’s NILE』2019年3月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています