日常にこそある洗練

個性豊かな若手料理人が多く登場している、昨今の中国料理。その中でも注目を集めているのが、「ミモザ」の南俊郎氏だ。上海の昔の日常料理の中に、中国料理の知恵、伝統の味覚構成、シンプルだが的確な技術を見いだし、旬の食材と組み合わせる。そんなナチュラルかつ洗練された料理で、多くの人をとりこにする。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

個性豊かな若手料理人が多く登場している、昨今の中国料理。その中でも注目を集めているのが、「ミモザ」の南俊郎氏だ。上海の昔の日常料理の中に、中国料理の知恵、伝統の味覚構成、シンプルだが的確な技術を見いだし、旬の食材と組み合わせる。そんなナチュラルかつ洗練された料理で、多くの人をとりこにする。

「ミモザ」上海蟹をぶつ切りにし、豆豉風味で炒めた一品
上海蟹をぶつ切りにし、豆豉風味で炒める。撮影時は12月中旬。この時季に旨みを強めるオスを2杯、内子が濃厚なメスを1杯の割合で。ミソが全体に絡まる、食べ応えのある仕立て。

本格派でありながら、自然体

昨今、若手料理人の活躍が目覚ましい中国料理。南俊郎氏が2016年にオープンした「ミモザ」は、その中でもひときわ注目を集めている。

店が位置するのは青山通りから少しだけ入った、静かな路地沿いのビルの2階。入り口はごくさりげなく、店内はオープンキッチンを中心とするすっきりとしたレイアウト。グレーを基調としたシンプルなデザインが印象的だ。

この空間で提供されるのは、昔の上海の日常料理をベースとする品々。単品とコース、両方をそろえる。

「料理では、常に軽やかさを意識しています」と南氏が話す通り、どの品も中国料理の香りをまといながら、食材が生きていてナチュラル。体にすんなりと入ってくるのが魅力だ。

南氏が修業を開始したのは、大学卒業後。「昔から料理への関心はありましたが、決心がついたのは、就職も決まっていた大学の卒業時」だという。やはり料理の道へ、と大阪の調理師学校に入り、通学と並行して大阪の「空心」で働いた。

そのまま同店に就職し、中国の食文化に通じたオーナーシェフの大澤広晃氏による、伝統と独創を組み合わせた料理を習得。二番手を務めたのちに東京に移り、食べ歩きをして最も引かれた新宿の「シェフス」へ。ここで6年半働き、うち4年半は料理長を務めた。

シェフスで身につけたのは、上海の上流家庭の料理。ごくシンプルでありながら、繊細な技術を生かすのが特徴だ。奥深い味わい、かつ上海の人が毎日食べても飽きない。そんなシェフスの料理は、南氏が理想とする料理像に大きな影響を与えた。

「日々食べる料理こそ、理にかなっていておいしい。余分な手が加わっておらず、無理がない」と南氏。

ハレの日を彩る宴会料理や、クリエーティブでモダンな料理も楽しいものだ。しかし食べ終えた時にホッとするような、それでいて中国伝統の味の構成や技、そして洗練も備えた料理が、今、とても新鮮で人々の心に響く。

本格派でありながら、自然体。若くして、理想形が明確。そんな南氏の料理から、目が離せない。

ミモザ 南俊郎氏

南俊郎
1983年徳島県生まれ。大学卒業後に料理の道に進む。「酒中花 空心」(大阪)を経て、「シェフス」(東京・新宿)で働き、料理長を4年半務める。2016年に南青山に「ミモザ」を独立開業。

●ミモザ
東京都港区南青山3-10-40
FIORA南青山2F
TEL 03-6804-6885
mimosa-aoyama.com

※『Nile’s NILE』2019年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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