世界のベストレストラン50を読み解く

21年目を迎える「世界のべストレストラン50」。食のアカデミー賞とも称される、華やかなアワードは、世界のガストロノミー界の潮流を表しており、そのランキングからトレンドが見えてくる。さらに昨今はランキングにとどまらず、ダイバーシティー、地方創生、持続可能性といったSDG’sな側面も強調されてきている。そうした意識を持って俯瞰してみると新たな食の世界地図が見えてくる。

Text Hiroko Komatsu

21年目を迎える「世界のべストレストラン50」。食のアカデミー賞とも称される、華やかなアワードは、世界のガストロノミー界の潮流を表しており、そのランキングからトレンドが見えてくる。さらに昨今はランキングにとどまらず、ダイバーシティー、地方創生、持続可能性といったSDG’sな側面も強調されてきている。そうした意識を持って俯瞰してみると新たな食の世界地図が見えてくる。

  • 川手浩康シェフ
    フロリレージュの川手浩康シェフ。秋から新店舗に移り、さらなるジャンプアップが期待される。
  • 傳の長谷川在佑シェフ
    傳の長谷川在佑シェフ。今回も日本シェフの中でトップの21位にランクイン。世界が認めたホスピタリティーは揺るぎない。

日本およびアジア勢は今後のインバウンドに期待

日本勢の結果は、「傳」21位、「フロリレージュ」27位、「セザン」37位入賞という、昨年の初の4店舗入賞と華やかな話題をふりまいたのに比べると、やや残念なものに終わってしまった。日本のガストロノミー業界を牽引し続けている「NARISAWA」が惜しくも51位、昨年41位にランクインした「ラシーム」が60位と後退する結果となったのが、大きく影響している。評議員は1年半以内に訪れた店しか投票できないという規定があるので、やはり、コロナ禍の影響が大きく残っていたと考えられる。

今年のインバウンドの勢いを鑑み、来年におおいに期待したいところだ。ただ、美食大国フランスやペルーのような国からもニューエントリー店が複数入っているように(51位〜100位のランクも含め)、日本にもそうした勢いのある後進が必要であるのは明らかだ。願わくは、自国の料理で勝負できる人材の登場に期待したい。

アジア全体を見ても、トップがシンガポール「オデット」の14位。アジアベスト50で1位だった「ル デュ」が15位とは、欧州、南米に比べてアジアの評価が低過ぎると言わざるを得ない。その中で、オデットのジュリアン・ロイヤーシェフは、「シェフズ チョイス」というシェフが選ぶシェフ賞に選ばれており、ゆるぎのないテクニックが評価されたことは大変うれしい。しかしながら、中国圏では、香港の「チェアマン」が50位で唯一のランクインと寂しい限りだ。コロナ問題、政治問題含め、アジアまでフーディーズが到達できなかったのが、22年の現状なのであろう。

ランキングシステムはどのようになっているのか

ところで、こうしたランキングはどのように決まるのかと、読者は気になるところであるだろう。上述のように、世界5大陸、27の国と地域から選ばれた40人のフーディーが持ち票の10票のうち7票までを自国のレストランに、3票までを他国のレストランに投票し、その合計数で順位が決まるという仕組みだ。40人のうち、約1/3が料理関係者、約1/3がフーディー、約1/3がメディアである。そしてさらに、評議員の約1/3は毎年入れ替わるというのが規約になっている。投票できるのは1年半以内に実際に食べに行った店だけである。先章でコロナ禍の影響と述べたのはそうした意味からだ。これらのことを含め、毎年の順位の入れ替わりがダイナミックで、発信力があり、見ているものの心をはずませるのだ。

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ラグジュアリーとは何か?

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