日本の“精神的地産地消”

「地産地消には、物質的と精神的の二つがある」と、茶禅華の川田智也さん。今回紹介してくれた地産地消の素材は二つ、どちらも東京の素材だ。川田さんが想う地産地消とは。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

「地産地消には、物質的と精神的の二つがある」と、茶禅華の川田智也さん。今回紹介してくれた地産地消の素材は二つ、どちらも東京の素材だ。川田さんが想う地産地消とは。

東京産の烏骨鶏を使用した、竹筒入りの蒸しスープ
東京産の烏骨鶏を使用した、竹筒入りの蒸しスープ。産卵鶏としての役割を終えたメスはよいだしを出すので、清湯に使用。うまみと弾力のあるオスの肉は雲呑に使う。この烏骨鶏は繊細なうまみゆえ、調味は少量の紹興酒と金華ハムのみ。自家製の笹の茶を添える。

さて、川田さんが今回紹介してくれたのは東京の素材二つ。まず烏骨鶏(うこっけい)は、立川市の伊藤養鶏場のものだ。「私の求める“繊細で力強い”味。中国の烏骨鶏のパワフルさとは異なる魅力があります」

そしてもう一つの素材は、南麻布の水。「当店では3種類の浄水器で作る水や、白神山地や静岡から仕入れる水を料理により使い分けています。水は料理の味を変える、料理の根幹となる素材です」。南麻布の水にはほどよい硬さがあり、繊細かつキリッとした味を作ってくれるという。

この二つの素材で川田さんが作ったのは、竹筒に入れて蒸した、雲呑(ワンタン)入りの烏骨鶏の竹筒蒸しスープ。自家製の笹の茶を添える。「このお茶は当店の入り口に植えている笹の葉で作った、究極の地産地消です(笑)」

お茶の風味は淡いが、烏骨鶏のスープと出合うと大きな効果を発揮する。
「烏骨鶏のスープを味わった後に笹のお茶を飲んでいただくと、口の中がスッと澄み、別の軽やかなうまみが現れます。かつお節のだしの後に昆布だしを飲むと引き算が起きるのと同じ。口中調味です」。また竹筒の香りは、容器ごと蒸す中で清湯に移る。これが笹の茶と調和する。

川田さんは「茶禅華」のオープン以来、素材は全国から集め、東京の素材を強く意識したことはなかったという。「今回、地産地消のテーマに沿って東京の素材を探したら、素晴らしいものがあった。大きな発見です」。
これからは東京の素材を掘り起こしていきたいという。
「どんな発見や展開があるかワクワクします」

茶禅華 川田智也さん

川田智也 かわだ・ともや
1982年、栃木県生まれ。「麻布長江」にて10年間にわたり四川料理を修業したのち、「日本料理龍吟」に入門。同台湾店である「祥雲龍吟」の立ち上げから参加し、副料理長を務める。帰国後、準備期間を経て2017年2月に「茶禅華」をオープン。

●茶禅華
東京都港区南麻布4-7-5
TEL 050-3188-8819(予約専用番号)
sazenka.com

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