中国山地の雪解け水からなる豊かな伏流水と、県内で栽培された上質な酒米から生み出される、きめ細かくまろやかな口当たりの美酒の産地でもある鳥取県。各地の多彩な食文化に育まれた、個性あふれる酒造りが根付いているのも特徴だ。
近くに祀られた水の神、弁財天にちなんで名づけられた「辨天娘(べんてんむすめ)」の造り手である太田酒造場もその一つである。
「蔵ができて100年余り。私で5代目です」と社長の太田章太郎さん。
「地元の農家さんにいい米を作ってもらって、それをなるべく磨かずに完全発酵させるのがうちのスタイルです。どういうことかというと、お酒を造る時、糖分を酵母が食べてアルコールに変えていくのですが、通常は途中で発酵を止めて甘みを残すところを、うちでは完全に発酵させます。こうすると、米の個性が素直に酒に出るのです」
だからこそ、玉栄(たまさかえ)、強力(ごうりき)、山田錦、鳥姫(とりひめ)など酒米ごとに、さらに生産者ごとにタンクを分けて醸造する。酒米はすべて若桜町の契約農家と、自社栽培で賄う。
「酒米栽培の段階から対話ができるのが、地元の契約農家さんにお願いするメリットです。米の収穫量が少ない年は酒の出荷量も少ないですが、うちらしい酒造りをするためなので、それでいいと思っています」
宮﨑さんも「冷やでもおいしいし、燗(かん)にしても力が出ます。大阪の店にいた時は、手に入らなかったくらい人気のお酒です」と太鼓判。食中酒として、どんな料理にも合う銘酒だ。
●太田酒造場
www.ben-ten.sakura.ne.jp
※『Nile’s NILE』2019年9月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています
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神経締め、墨・血抜きして極上に
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淀江漁港
御来屋漁港
醸は農なり日置桜
燗してなおよくなる辨天娘