前田牧場の牛舎は天井が高く、明るくて風通しがいい。
「20年牛を育ててきて、肉の味を決めるのは食べ物だけではないとわかりました。自分が牛の身になって、今食べたい、今休みたいというのをかなえてやって、ストレスなく育てると、餌をよく食べて元気に育ちます」と、前田道夫さん。愛情と環境。それを徹底したら「うちの牛肉がおいしいと言ってくれる人が増えました」
前田牧場の鳥取和牛は、「鳥取県畜産共進会グランドチャンピオン」など数々の賞に輝く一級品だ。加えて、脂肪中にオレイン酸を55%以上含有する「鳥取和牛オレイン55」の基準を満たすことが多い。
コクのある赤身とあっさりとした脂肪のバランスがいい肉は、10年前に東京で試食会を開いた時は「脂が軽すぎる」と指摘された。「最近は、軽い脂がいいというお客様が増えてきた」と前田さん。
祖父の代がこの地で酪農とスイカ栽培を始め、スイカでは食味の全国大会で一等を取った。「今度は牛で一等を取ろう」と、20年前から肉牛一本に。「年齢を重ねてもたくさん食べられる肉」を目指し、一等の夢を実現した。
「今年から息子に代を譲ったのですが、孫の心愛は毎日、牛の面倒をよく見てくれます。餌やりや掃除はもちろん、牛にブラッシングをしたり、なでたりして、愛情を注いでくれます」と満面の笑みで話す。
確かに、前田牧場の牛たちは満たされていて、ものすごくやさしい。心愛ちゃんがたっぷりと愛情を注いで、世話をしているからだ。
●前田牧場
※『Nile’s NILE』2019年9月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています
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