いいきゅうりは、いい砂丘地で育つ

加賀野菜“加賀太きゅうり”の農地は、昭和45(1970)年ごろに、市街化が進んだ三馬地区から砂丘地の打木地区に移動した。海岸線に隣接する広さ約2.8haの農地で伝統野菜を作り続けているのが、13軒の農家が所属する「加賀太きゅうり部会」だ。

Photo Satoru Seki

加賀野菜“加賀太きゅうり”の農地は、昭和45(1970)年ごろに、市街化が進んだ三馬地区から砂丘地の打木地区に移動した。海岸線に隣接する広さ約2.8haの農地で伝統野菜を作り続けているのが、13軒の農家が所属する「加賀太きゅうり部会」だ。

近江町市場

近江町市場
2015年の北陸新幹線開業により、来場者数は約1.6倍にまで増加したと言われている近江町市場(おうみちょういちば)。観光地としての役割も担うことになり、振興組合は地元の客にも観光客にも買い物を楽しんでもらえるよう対応を進めた。新型コロナウイルスの影響で遠方からの客足は遠のいたが、徐々に戻りつつあるという。

“おみちょ”の愛称で市民から親しまれている近江町市場には、約170の店が軒を連ねる。その歴史は古く、市内の川辺に点在していた市を、1721年に加賀藩が金沢城に近い現在の場所に集めたのが始まりとされている。明治時代になると、卸売り、仲卸、小売りなど役割の異なる店も並ぶようになり、市民の台所として発展。その後、卸売市場は別の場所に移され、鮮魚や青果、精肉などを販売する小売店や飲食品店が中心となっていった。

  • 市場内は通りごとに名前がつけられ、案内板があちらこちらに設置されている市場内は通りごとに名前がつけられ、案内板があちらこちらに設置されている
    市場内は通りごとに名前がつけられ、案内板があちらこちらに設置されている。
  • 北形青果 近江町本店北形青果 近江町本店
    北形青果 近江町本店。店長の北形謙太郎氏は、野菜ソムリエの資格を有する野菜と果物の専門家だ。
  • (左)北形青果 近江町本店(右)近江町市場、開設は1721年(300年を経過)(左)北形青果 近江町本店(右)近江町市場、開設は1721年(300年を経過)
    (左)北形青果 近江町本店では、常時200種類以上の野菜を取り扱っている。
    (右)2021年、近江町市場は開設からちょうど300年を迎えた。
  • 市場内は通りごとに名前がつけられ、案内板があちらこちらに設置されている
  • 北形青果 近江町本店
  • (左)北形青果 近江町本店(右)近江町市場、開設は1721年(300年を経過)

300年の歴史を誇るそんな市場内で一番の規模を誇る青果店が、昭和5(1930)年創業の北形青果 近江町本店だ。加賀野菜認定専門店でもあり、15種類ある加賀野菜を、出回り時期に合わせて取り扱っている。

金沢の人にとって、加賀野菜は季節を感じる定番の郷土食材。そう語るのは、店長の北形謙太郎さんだ。

「加賀太きゅうりは4月を告げるかのごとく店頭に並び始め、5月と6月が最盛期。少し落ち着いてくると初夏がきたなあと思います。そういうふうに食文化と季節は密接に関係している。そうやって無意識のうちに食べたくなる、思い出すということが金沢の人に伝承されてきた食文化なんです。加賀野菜も、もちろんその一つで、それが何よりの魅力だと思いますよ」

季節や場所を問わず、好きなものを好きな時に食べることができる現代だからこそ、訪ねてみたい金沢の粋な食文化。気になる食材ができた時は、産地に出向き味わうことで、季節の移ろいも感じていただきたい。

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