真のラグジュアリーとは 前編

「ファロ」のエグゼクティブシェフ 能田耕太郎氏とシェフパティシエ 加藤峰子氏が目指すのは、現代イタリア料理と、日本の風土や文化が融合した自由なガストロノミー。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

「ファロ」のエグゼクティブシェフ 能田耕太郎氏とシェフパティシエ 加藤峰子氏が目指すのは、現代イタリア料理と、日本の風土や文化が融合した自由なガストロノミー。

ファロ
花のタルトは加藤氏のスペシャリテ。土台は、黒文字など和の風味を練り込んだ生地。ヴィーガンのクリームチーズをのせ、風味と色彩のバランスのとれたハーブと花を約40種類飾る。発想の出発点はイタリアの食後酒「アマーロ」。清涼感があり、消化促進の効果もあるこの薬草入りリキュールと同様、このタルトを食べると胃が浄化されたように感じる。

一方の加藤氏は、東京に生まれながら中学校から英国に移り、高校と大学をイタリアで過ごした経験の持ち主。
学生時代からアートや哲学に興味を持つとともに、小さい頃から菓子作りが好きだったという。大学卒業後は大企業に勤めたものの、ある日、自分が本当にやりたいことをやるべきだと気づいて方向転換。菓子の道に進んだ。

加藤氏もまたイタリアの多くの名店で働いた。その中にはミシュラン三つ星の「オステリア・フランチェスカーナ」も含まれている。同店のシェフのマッシモ・ボットゥーラ氏は、早くから環境や社会の問題に対する危機意識を料理で表現してきた人物。また、破棄される予定だった食材で料理を作り、生活困窮者に無料で提供する食堂を立ち上げたシェフとしても知られている。
加藤氏は、イタリアでも、そして世界でもめずらしいそんな氏の元で働いた経験の持ち主。社会に対して積極的に行動するシェフを間近で見てきた。

そんな二人が牽引するファロでは、サステナブルに向けた取り組みを多彩、多層に実践している。たとえば、日本のガストロノミーレストランとしてはめずらしく、ヴィーガンコースを提供しているのはその一例。卵や乳製品を含む動物性素材を使わないヴィーガン料理は、環境に強い負荷をかけている畜肉の使用を避けられるなどサステナブルな食のあり方につながる。
今ファロでは、同様店の客層にしては若い30代の方が、ヴィーガンコースを求めて来店するケースが増えているという。

真のラグジュアリーとは 後編 へ続く

ファロ 加藤峰子氏

加藤峰子 かとう・みねこ
東京都生まれ。中学は英国、高校と大学はイタリアで過ごす。『ヴォーグ イタリア』誌で働いたのち、製菓の世界に入る。「イル ルオゴディ アイモ エ ナディア」「イル・マルケジーノ」「マンダリンオリエンタルミラノ」、「オステリア・フランチェスカーナ」などの名店の数々で、約10年間にわたり経験を重ねる。18年より現職。

●ファロ
東京都中央区銀座8-8-3
東京銀座資生堂ビル10F
TEL 0120-862-150(フリーダイヤル)、03-3572-3911
faro.shiseido.co.jp

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。