ボジョレー・ヌーボーが日本で異様なまでの盛り上がりを見せ始めるのは、85年に解禁日が改正されてからのこと。日付変更線の関係で、欧米に比べて数時間早くこの日を迎えられることから、日本が“世界で一番早くヌーボーを味わえる”と、早いモノ好きの心をくすぐり、さまざまな解禁イベントが企画された。
レストランやバーでのカウントダウンは現在でも行われているが、到着したばかりのヌーボーを空港で味わえるかのように演出したイベントや、ド派手な船上パーティーなどもあったように記憶している。時あたかも、日本がバブルへと向かう時代。解禁を祝う宴は、年々大がかりになっていくが、バブル崩壊に伴い沈静化。しかし、90年代後半から盛り返し現象が見られた。
96年にボジョレーワインの最大手ジョルジュ デュブッフ社のヌーボーをサントリーが取り扱い始めたことも要因の一つだろうが、90年代後半に日本にワインブームが巻き起こったことも大きかった。95年に田崎真也氏が世界最優秀ソムリエコンクールで優勝し、ワインの世界に俄然注目が集まり始める中、雑誌『ブルータス』のワイン特集号をきっかけとしてブームが勃発、ソムリエ資格を取りたいという人たちも大量発生した。この時期は、日本におけるワイン文化の成熟期と言えるかもしれない。
ボジョレー・ヌーボーも改めて躍進し、「100年に一度の出来」と言われた2003年にピークを迎える。だが皮肉にも、ボジョレーしか知らなかった人までもが、世にさまざまなワインが存在していることを学習したため、ボジョレー・ヌーボーはワインを楽しむ選択肢の一つ、というポジションに落ち着き、近年はかつてのような熱狂を巻き起こすことはなくなってしまった。
ただこの沈静化には、ボジョレー・ヌーボーやボジョレーワインに対する認識不足や誤解もあるのではないだろうか?知るほどにボジョレーワインは魅力的で、ヌーボーで乾杯する気分も上がるはず。この秋、改めてボジョレーワインに向き合いたい。
ボジョレー・ヌーボー解禁!
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