一貫した品質主義

ワインの輸入からワインショップ、通販、卸、国際事業までを手掛けるエノテカ。同社が扱うボジョレー・ヌーボーの特徴と背景を常務執行役員の改野晃一さんにうかがった。

Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata

ワインの輸入からワインショップ、通販、卸、国際事業までを手掛けるエノテカ。同社が扱うボジョレー・ヌーボーの特徴と背景を常務執行役員の改野晃一さんにうかがった。

ボジョレー・ヌーボー解禁!」「ボジョレーワインの基礎知識」から続く

エノテカ常務執行役員の改野晃一さんに
改野晃一 かいの・こういち
1970年、大阪市生まれ。2009年、エノテカ入社。現在、同社常務執行役員、商品部長兼広報室長。日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー。WSET Level3 Award in Wines、WSET Level 3Award in Sake。

日本にボジョレー・ヌーボーが輸入されるようになったのは1970年代。その後バブル経済が始まり、ワインブームが勃興。とりわけ「11月の第3木曜日に解禁」という特別感の強いボジョレー・ヌーボーは熱狂的に受け入れられるようになった。「日本は日付変更線の関係から、フランス本国より8時間も早く飲むことができます。『世界一早く飲める』というインパクトが、初もの好きな日本人の気性をあおったのでしょうね」と、改野さんは話す。ちなみにエノテカは設立当初、ボジョレー・ヌーボーを取り扱う予定はなかったという。「でもお客様からの強い要望に応える形で、数年後には輸入を開始。多くの方々に喜んでいただきました」
 
そんなボジョレー・ヌーボーの熱狂も、バブルの終焉とともに下火に。一時期は低迷したが、2003年に復活する。「この年のフランスは、歴史的な猛暑だったのです。前評判で『100年に一度のクオリティー』と質の高さが強調され、多くの方々の注目を呼び覚ますことになりました」。その結果、ボジョレー・ヌーボーは再度空前の盛り上がりを見せることに。しかも、日本でのワイン文化の成熟につれ、「お客様は徐々に品質や味わいを重視するようになっていきました」という。そして今や、季節の風物詩として、しっかりと根付いている。
 
さて、日本でこうした紆余曲折を経てきたボジョレー・ヌーボーだが、エノテカでは一貫した哲学で向き合ってきた。「輸入を始めた時から、量を売るより、品質のよいものを確実にお届けしています」と改野さん。その象徴が、パリの名門中の名門老舗レストラン「タイユヴァン」の目利きによるボジョレー・ヌーボーを輸入開始当初から扱っていること。このレストランは1973年から30年以上にもわたり三つ星を守り続けてきた、名実ともにフランス最高峰のレストランで、料理はもちろんワインのセレクトでも尊敬を集めている。「こちらのワインリストに載ることは、生産者にとって最高の栄誉。ワイン専門家や愛好家たちの指標にもなっています」というほどだ。

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