仁淀ブルーを求めて

まず、アニメの舞台になった浅尾沈下橋(あそおちんかばし)に向かった。越知町(おちちょう)浅尾地区と鎌井田地区を結ぶ、全長121mの橋だ。仁淀川に架かる沈下橋の中でもとりわけ景観がすばらしいとされる。川底まで見える透き通ったきれいな水といい、川面のすぐ上を真っすぐ伸びる欄干のない橋の姿といい、川向こうに広がる里山といい、ここには日本の原風景があると感じる。
仁淀川は、西日本の最高峰 石鎚(いしづち)山を源流とする。四国山地の険しい隙間から姿を現し、愛媛3市町、高知7市町村を貫き、高知側だけでも120本もの多くの支流と合流して太平洋に注ぐ。深いV字形に削れた渓谷美を描いて蛇行する姿態をもし上空から眺められるなら、おそらく身をくねらせる竜のようだろう。
次に向かったのは、にこ淵(にこぶち)だ。長年仁淀川を撮り続けているネイチャーカメラマンの高橋宣之氏から「この青こそ仁淀ブルー」とのお墨付きを得たポイントだ。
実は数年前にテレビで、急斜面をロープ伝いに降りた先に出現するにこ淵を見たことがある。その時に「行きたい! 見たい! でもムリ」とあきらめていたのだが、幸運なことに2018年、階段が整備されていた。それなら大丈夫。
腰が引けながらも、直角と思えるほどの急な階段を降りると、3分ほどで滝壺(たきつぼ)の一角が目に飛び込んでくる。あまりの美しさに「何、これ」とものすごく驚いた。さらに下って、切り立つ岩の間から真っすぐ落ちる滝の全貌(ぜんぼう)が見えると、また新たな驚きに襲われた。「これが仁淀ブルーなのか」と。身も心も吸い込まれるような色に魔力を感じてか、ここには「水神の化身の大蛇が棲む」と伝わる。
ただ残念ながら、この日は曇天で緑がかった青色。本来の「仁淀ブルー」は、晴れた日に太陽の光がふんだんに降り注ぐわずかな時間にのみ現れるそうだ。それでも透き通った滝壺の色は、十分過ぎるほど美しい。滝の水飛沫(みずしぶき)を浴びながら舞うチョウに気持ちを重ね合わせるように、夢幻のひとときを楽しんだ。
※『Nile’s NILE』20211年7月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています
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