老化細胞の活動を阻害する
「老化細胞と言っても、それはすべて同じではなく多様な老化細胞が臓器や組織に蓄積し、慢性炎症を起こします。これらの多種多様な老化細胞が体内で生きていくためには、ある酵素が必要なのです。その酵素の働きをブロックすることで、老化細胞は生きていけなくなり、生体から取り除かれます。その結果慢性炎症が起きなくなるので、臓器や組織の機能低下が抑えられると考えられます」
この酵素はグルタミナーゼ1(GLS1)と呼ばれるもので、これの働きを阻害するGLS1阻害薬がすなわち老化細胞除去薬となる。
「老齢のマウスにGLS1阻害薬を投与したところ、加齢によって起こる腎機能の低下など、すでに起こっている各臓器の機能低下が改善されるというデータが得られています。また動脈硬化の改善も見られました」
このように、すでに起きている加齢による老化現象の改善が見られるということは、加齢とともに起こる病気の予防や改善に効果を発揮する可能性が高い。
「筋肉量の低下による運動能力の低下や、それに伴う脂肪組織の萎縮、そして代謝異常も加齢によって起こりますが、マウス実験ではGLS1阻害薬の投与で脂肪組織の萎縮が抑えられることがわかっています。握力の低下も抑えられて、その結果、ヒトであれば70代くらいのマウスが、40〜50代程度まで握力がある状態になるのです」