リーダーに求められる メンタル・タフネス

1997年11月16日――サッカー日本代表が史上初のワールドカップ本戦出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれるあの日の感動は、20年近くの時を経てもなお、鮮烈な記憶として日本人の脳裏に焼き付いている。しかしこの間、代表監督を務めた岡田武史氏の時間はドラスティックに変貌してきた。2014年11月には四国地域リーグ「FC今治」のオーナーに転身。サッカー界の変革と地域創生を目指して、クラブ経営に邁進する、その卓越した指導力とマネジメント手腕が、ビジネス界からも大きな支持を得ている。理想の組織、リーダーシップとは……岡田氏が通うフィットネスクラブ、グランサイズ大手町で、この1年を振り返りながら、熱弁をふるっていただいた。

Photo TONY TANIUCHI Text Junko Chiba

1997年11月16日――サッカー日本代表が史上初のワールドカップ本戦出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれるあの日の感動は、20年近くの時を経てもなお、鮮烈な記憶として日本人の脳裏に焼き付いている。しかしこの間、代表監督を務めた岡田武史氏の時間はドラスティックに変貌してきた。2014年11月には四国地域リーグ「FC今治」のオーナーに転身。サッカー界の変革と地域創生を目指して、クラブ経営に邁進する、その卓越した指導力とマネジメント手腕が、ビジネス界からも大きな支持を得ている。理想の組織、リーダーシップとは……岡田氏が通うフィットネスクラブ、グランサイズ大手町で、この1年を振り返りながら、熱弁をふるっていただいた。

岡田武史 おかだ・たけし
岡田武史 おかだ・たけし FC今治オーナー。サッカー元日本代表監督。1956年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。高校時代にユース日本代表、大学時代にユニバーシアード日本代表。古河電気工業に入社しサッカー部に所属、85年まで日本代表。1997年に日本代表監督に就任し、史上初のW杯出場を実現。その後Jリーグのクラブチーム監督を経て、2007年から再び日本代表監督に復帰。2010年のW杯南アフリカ大会でベスト16に導いた。2014年11月からFC今治オーナーに就任。

オーナー初年度となった昨年、FC今治は惜しくもJFL(日本フットボールリーグ)への昇格を果たせなかった。しかし岡田氏の表情はいたって晴れやか。「神様の『少しペースを落としてじっくり構えなさい』という計らいかな。実際、上がっていたら、体も心ももたなかったかもしれません」と笑う。そのくらい激務を極めた1年だったのだ。

命がけで走り続けた

「異次元に伸びるチューブの中を懸命に走ってた感じでしたね。夢はバンバン出てくるんだけど、どこまでやれるかわからないまま、考えては走り、走っては考え、本当に必死でした」

スポンサーの獲得、トップチームの強化、育成選手の指導、スタジアムの建設、中国事業……自ら「やる!」と宣言した多くの課題に同時並行的に取り組む毎日は、想像しただけで目が回りそうだ。「多い月には今治―東京間を6往復した」という。

「経営というのは、大枠では監督の仕事と共通するところが多いんです。組織をどう動かすかが眼目ですから。ただスパンが大きく違う。監督の時は次の大会を目指してやっていくので、長くても1年ぐらいのスパン。試合は90分ですしね。一方、経営は5年・10年先を見据えて、今何をやるべきかを考えなくてはいけない。そうするとプレッシャーの種類が違うんですよね。監督業は肩に重い鉛の塊が載っている感じ。筋力で耐えて耐えて、でも終わればバン!とその重荷は取れる。それに対して経営は真綿でジワジワと首が締まっていく感覚。僕の語る夢に共感して集まってくれた従業員や選手、スポンサーの気持ちに報いられるかな、ちゃんと給料を払えるかな、資金繰りがショートしないかな、といったことがすごく気になるので。それでも今まで120人くらいだった観客が2200人に増えたし、ファンの人からたくさんの感動メールをいただいたし、やってよかったと感じています」

リスクを取る覚悟と危機感

岡田武史 おかだ・たけし 2

岡田氏の夢は「7年後に1万5千人規模のスタジアムを建設する」「2025年にはJ1で常時優勝争いをするチームになる」「組織力を最大化するためのプレーモデル+練習法による『岡田メソッド』を国内外に普及させる」等々、壮大である。周囲の声は多くが「ムリだよ」――。「冷静に分析したら、僕だってムリだと思いますよ。スタートアップの9割は3年以内に潰れる、という不文律もあるし。ただ僕はそのリスク覚悟で1割に残ってやるという強い思いでチャレンジしてる。今までにはない発想で、いろんな仕掛けも打っていく。ある経営者に『大きなリスクを取って挑戦する人たちが世の中を変えてきたんだよ』と言われたけど、その通りだと思う。根底に常に危機感を持ち、その決死の覚悟を見せることで組織を動かす。よく言われるように、私利私欲のない高い志の山に必死で登る背中を見せるのがリーダーでしょう」

岡田氏はまた「決断は腹を括ってやらなきゃいけない」と言う。「負けたらどうしよう」「嫌われたらイヤだ」などとリーダーの心が揺れていては組織も揺れる。「とことん考え抜いて、最後は経験に培われた自分の直感に賭けて、全力でやれるだけのことをやるのがリーダーの腹の括り方。『無』に近い感覚」だと、岡田氏は語気を強める。そうしてリーダーが決断したことだからこそ、社員も感応するのである。

変革あるのみ

岡田氏の今年の目標の第一は「JFLに上がる」こと。「結果を残さないと、お金も周りの人のアテンションも続かない」からだ。 また、「みんなが自ら動き出してくれるような会社にしたいね。そのためには僕は、いつかは社長を譲って会長になるつもりです。みんなには『君たちの力でこの会社を何とかしてくれ』と投げかけています。岡田メソッドの海外展開を本格始動させるなど、新しい挑戦もします」とよどみない。

  • グランサイズ 大手町 グランサイズ 大手町
    グランサイズ 大手町 TEL:03-3516-2771( 東京都千代田区大手町2-1-1 大手町野村ビル 25階・26階・27階)大手町駅直結の抜群のアクセス。地上約120mという爽快な眺望。東京の夜景や、スカイツリーを眺めながらのトレーニングは格別。ハイグレードなマシンや25mプール、トップクラスのパーソナルトレーナーを完備。Wi-Fi環境を整えたビジネスラウンジも利用できる。
  • グランサイズ 恵比寿ガーデン グランサイズ 恵比寿ガーデン
    グランサイズ 恵比寿ガーデン TEL:03-5424-1212( 東京都目黒区三田1-13-2 恵比寿ガーデンプレイス内)壮麗なエントランスをくぐると、ゴージャスでゆったりとした空間が広がる。都会の喧騒を離れて、心からリラックスしたフィットネスを。ラウンジでは運動の前後にゆったりとソファに身を沈め、くつろぎの時間を過ごすことができる。
  • グランサイズ 青山 グランサイズ 青山
    グランサイズ 青山 TEL:03-5766-0852( 東京都渋谷区神宮前5-52-2 青山オーバルビル 4階・5階)ハイセンスな街青山で、心と体をシェイプするための、最新式のフィットネスマシンやトレーニングギアを完備。開放感あふれる、開閉ルーフ式25m温水プールで青空や満天の星の下で優雅な気分を満喫できる。上質を知る大人にふさわしいGRAND(最高)という名のウェルネス空間。
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  • グランサイズ 恵比寿ガーデン
  • グランサイズ 青山

「それと、ここ『グランサイズ大手町』にももっと通いたい。去年は来てもビジネスラウンジでPCに向かっている状況で。もっともここは物事を考えて決める空間としてもなかなか良いのですが。今年はうまく空き時間を利用して立ち寄りたい。1時間ちょっとジムで汗を流してシャワーを浴び、次の打ち合わせに向かうと、心も体もリフレッシュされますから。あと、欲を言うなら……忙しくてなかなか来られないので、自宅の近くにも、ぜひグランサイズが欲しいんだけどね。そうしたらもっと通えるので。どうかな」

多忙ななか、物事を考えたり体を鍛えたりするグランサイズでの一人の時間――。リーダーとしての判断力やメンタル・タフネスを支える場所にもなっているようだ。

岡田氏のメンタル・タフネスが、サッカー界にどんな変革をもたらすのか。今後も岡田氏の動向から目が離せない。

●問い合わせ グランサイズ各施設まで

※『Nile’s NILE』2016年3月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。