クロノグラフの先駆者

1887年スイスのラ・ショード・フォンで創業以来、クロノグラフの歴史をリードし、イタリアの軍関係者や時計愛好家を魅了しながら成長してきたウォッチブランド、エベラール。2021年に日本への本格上陸以降、評価が高まっている今、その歴史と魅力を検証する。

Photo Takehiro Hiramatsu(dingi)  Text Yasushi Matsuami

1887年スイスのラ・ショード・フォンで創業以来、クロノグラフの歴史をリードし、イタリアの軍関係者や時計愛好家を魅了しながら成長してきたウォッチブランド、エベラール。2021年に日本への本格上陸以降、評価が高まっている今、その歴史と魅力を検証する。

「クロノ4 21-42」
2001年デビューの「クロノ4」をベースに、2021年にサイズアップして登場。タキメーターを刻んだブラックセラミックベゼルや、「パンダ」タイプの4カウンターがスポーティさを際立たせ、ダイヤルのクル・ド・パリ装飾や、カウンターに施された同心円状のスネイル仕上げが、エレガントな雰囲気を醸し出す。
「クロノ4 21-42」自動巻き、ケース径42mm、SSケース×ラバーストラップ、5気圧防水、1,172,600円。

135年にわたって途切れることなく歴史を刻んできた名門、エベラール。創業者ジョルジュ・ルシアン・エベラールは、1887年に弱冠22歳で自身の工房を設立後、クロノグラフ懐中時計を完成させ、1919年にはワンプッシュ・クロノグラフ腕時計を開発。
以降、35年にはスタート/ストップボタンを独立させたダブルプッシャー・クロノグラフ、38年には12時間積算計を備えたクロノグラフ、39年にはスプリットセコンド・クロノグラフ……と世界初となる機能のクロノグラフを相次いで開発し、評価を決定づけていく。

40年代に入ると、イタリア海軍が将校用のオフィサーズウォッチとしてエベラールのクロノグラフを採用。42年には、伊空軍の特殊任務フライトにも同社の懐中時計が採用されている。こうした軍での信頼感に加え、92年には優勝回数70回を誇り、イタリアの国民的英雄と呼ばれたレーシングドライバー、タツィオ・ヌヴォラーリの名を冠したクロノグラフを発表し、人気を広げる。

「クロノ421-42」
人気の高い「クロノ4」の20周年モデル「クロノ421-42」。自動巻き、ケース径42mm、SSケース×クロコダイルストラップ、5気圧防水、1,115,400円。

元フィアットグループの総帥で、希代のファッショニスタとして、今なおリスペクトを集めるジャンニ・アニエッリも、エベラールの愛用者だったことが知られている。また、モトGPのチャンピオン、ロリス・カピロッシ、2006年のW杯を制したイタリア代表のMFジェンナーロ・ガットゥーゾら、イタリアの国民的スターがこぞってエベラールを選んだ。

そんなエベラールが21年、日本への本格上陸を果たした。長い歴史の中で培われた名機のDNAを受け継ぐ充実のラインアップの中から、“顔”というべき3モデルを紹介したい。

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。