鍵でゼンマイを巻き上げると、振り子が約1.3秒周期で動き出し、カチカチと心地よい音を響かせながら、ゆったりと時を刻む。オフホワイトの文字板に配されたユニバーサルデザインフォントのアワーマーカーは、二度重ねによる厚塗り印刷によって、自然な存在感を主張。時分針は、明治時代のものを元に、指先で回しやすい先端形状に仕上げられた。水平を取るために振り子の下端奥に取り付けた録見飾り板には、創業当時のシンボルである「丸角Sマーク」もあしらわれている。
外装の木枠は、背の部分が大きく弧を描く形状を採用した。ウォルナットの温かみのある質感と相まって、落ち着きがありながら、洗練されたモダンな印象を醸し出す。天童木工がこれを手がけた。1940年の創業以来、薄手の木材を積層し、曲げて成形するプライウッド家具のスペシャリストとして国内外で高く評価され、日本のインダストリアルデザインのパイオニア的存在である柳宗理や、丹下健三、黒川紀章らのアーキテクトとのコラボレーションでも知られている。あえて無垢材を使わず、成形合板製としたのには、美しい外観の実現だけでなく、木材の無駄を排するサステナブルな配慮があった点も特筆したい。
端正で飽きがこず、クラシックにしてモダンなたたずまい。そこに秘めた掛け時計初号機へのリスペクトとサステナブルな思い。自宅リビングで、半世紀の眠りから覚めた時の〝息吹〞を、心ゆくまで味わいたい。
●セイコータイムクリエーション
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