ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2022
昨年、一昨年と、コロナ禍の影響で完全オンライン開催となった新作エキシビション「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」が、3年ぶりのフィジカル開催とオンラインとの2本立てで実施された。前身というべきエキシビションSIHHに参加していたリシュモングループのブランドに加え、バーゼルから転じたパテック フィリップ、ロレックスなど、ビッグメゾンから独立系まで38ブランドが参加。
昨年から数ブランドの出入りがあった中、グランドセイコーが初出展を果たした。来場者は2万2000人。
また、同じタイミングで、コルムやジンほか中堅ブランドをメインに35ブランドが参加した新エキシビション「タイム トゥ ウォッチ」、独立時計師アカデミーによる「マスターオブ オロロジー」、グッチの独自エキシビション「グッチ ワンダーランド」、日本からの受け入れはなかったがフランク ミュラーグループの「WPHH」などもフィジカル開催され、ウォッチシーンの力強い鼓動を印象付けた。
この他、オーデマ ピゲ、リシャールミル、スウォッチグループの各ブランドなどは、独自の新作発表スタイルを採ることを表明し、この春の新作をラインアップしてきた(ちなみに、世界最大の時計宝飾展示会だったバーゼルワールドは、再開の道筋が全く見えてこない)。
コロナ禍以降、一時は停滞感のあった時計業界だが、図らずもハイエンドウォッチの需要が急激に回復し、二次流通市場も含め、かつてないホットな状況が到来している。それを反映したかのように、今年の新作はクリエイティブな魅力にあふれたモデルが目立った。
トレンドとしては、リピーターなどのチャイミングウォッチ、GMTやワールドタイムなどのトラベルウォッチ、ダイバーズウォッチなどで、注目作が多数ラインアップされた。ラグジュアリースポーツウォッチの人気も継続傾向にある。
ここ数年グリーンが人気色だったが、ヴィヴィッドな多色展開やレインボーカラーなどもトレンド化の予兆。各メゾンとも、従来よりも新作の型数を手堅く絞り込み、発表から発売までのタイムラグを短くする傾向も歓迎すべきものだろう。
ブロックチェーン技術によるNFTに参入するブランドも押さえておきたい。ブルガリは世界最薄記録を更新した「オクト フィニッシモ ウルトラ」に刻印したQRコードを介してNFTアートワークにアクセスできるようにし、ウブロはアーティスト村上隆氏とのコラボ作を、ルイ・モネは「スペース レヴォリューション ウォッチ」にインスパイアされたNFTコレクションを発表した。
伝統的でアナログな世界観は、タイムピースとは切っても切り離せないものだが、最新のデジタルな世界観や価値と、どう結びつけていくのか? その課題をクリアし、次世代ウォッチシーンを切り開く胎動も、この春の新作から感じ取れた。危機が取り除かれ、かつての日常を取り戻した世界で、その成果が花開くことに期待したい。