ドイツ軍パイロットで飛行教官も務めたヘルムート・ジン氏が、フランクフルトに「ジン特殊時計会社」を設立したのは1961年のことだ。自身の経験を生かしたコックピットクロックやパイロットウォッチなどで評価を確立。一例が、ミニッツカウンターをセンターに配置したコックピットクロック「Nabo 17 ZM」。70年代後半に独空軍用に開発され、現在も多機能戦闘機トルネードが採用する。完成度の高さがうかがえる。
これを着想源とする新作が「717」である。クロノグラフの秒・分積算計をセンター方式化。高い視認性はもちろん、オリジナル譲りのタフな計器然とした表情もいい。
ケースには、一般的なスチールよりも耐久性、耐腐食性に優れた904Lステンレスを採用。さらに、ジン独自の表面硬化処理技術テギメントとPVD加工を組み合わせたブラック・ハード・コーティングにより、セラミックと同等以上の耐傷性を実現。またケース内の除湿のため、ドライカプセルの挿入やプロテクトガス充填などによるArドライテクノロジーも採用され、信頼性を高めている。
60周年を祝う「144.ST.S.JUB.Ⅱ」もジンらしさにあふれた一本。「717」と同様、ブラック・ハード・コーティングの904Lケースや、Arドライテクノロジーも採用。精悍な存在感を技術力が支えている。
2018年に惜しまれつつ鬼籍に入った創業者の魂が、後継者たちに受け継がれていることを雄弁に物語る2モデルである。
●ホッタ
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※『Nile’s NILE』2021年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています