F1サーキットには、他のスポーツやイベントなどでは味わうことのできない、桁違いの興奮が用意されている。そこには地上最高速レベルの戦いがあり、それを支える最先端技術があり、パドッククラブでのラグジュアリーな社交がある。モータースポーツの歴史的・文化的バックグラウンドも薫っている。その全ての世界観が「F1」という言葉に集約されている。
リシャール・ミルが「時計のF1」を掲げて、彗星のごとくシーンに登場したのは、21世紀に入って間もなくのことだった。F1マシンを思わせるスポーティーでエッジィな外装にトゥールビヨンを始めとするハイエンド機構を搭載。最高峰のエンジニアリング、誰も使ったことのない先進的マテリアル、驚異的な耐衝撃性、そしてアドレナリンを噴出させるようなラグジュアリーな世界観――まさに「時計のF1」と呼ぶにふさわしい全てが備わっていた。
そんな孤高のスタンスを貫き、創立20年を迎えようとする2020年末に、約5年の開発期間を経て発表されたのが「RM 65-01 オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ」だ。リシャール・ミルを象徴するアールを描くトノーケースは、ここに紹介しているラグジュアリーなレッドゴールド製と、超軽量で強靭なカーボンTPT®製の2タイプが用意された。
搭載するのは、高級ムーブメントサプライヤーとして知られるヴォーシェ・マニュファクチュールと共同開発した、ブランド初の自動巻きスプリットセコンド機能付きキャリバーRMAC4。スプリットセコンドはラップタイム表示が可能な機能で、トゥールビヨンやミニッツリピーターに匹敵する製作難度の高さで知られる。2時位置のプッシャーを押してクロノグラフを作動させると、オレンジマーカー付きクロノグラフ秒針と、ブルーマーカー付きスプリットセコンド針が、重なり合って計時を開始。10時位置のプッシャーを押すと、ブルーマーカーのスプリットセコンド針は停止してラップタイムを示す一方、クロノグラフ秒針は計時を継続。再度10時位置のプッシャーを押すと、スプリットセコンド針がクロノグラフ秒針に瞬時に追いつき、また重なり合って計時を続ける。モータースポーツマインドを刺激する機能だ。
8時位置のレッドクオーツTPT® 製プッシャーを押すことで動力ゼンマイを高速で巻き上げる、特許取得機構も興味深い。125回のプッシュでフルパワーとなるが、マシンに注油するかのごとく、エネルギーを充填する行為が、この時計との一体感を高めてくれる。
11時位置にはグリーンで囲まれたヴァーティカルデイト、4時位置にはリューズと連動機能を選択できるファンクションセレクターも装備。時、分、秒はイエロー、クロノグラフはオレンジと、機能ごとに色分けされた表示は実用性に加え、エキサイティングなカラーをまとったF1マシンを彷彿させる。「時計のF1」を掲げて20 年、トップを独走するリシャール・ミルのエグゾーストノートが聞こえてきそうなモデルである。
●リシャールミルジャパン
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※『Nile’s NILE』2021年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています