カイロスとクロノスが交差するところ

ドイツ時計の“聖地”と呼ばれる、グラスヒュッテ。1845年にフェルディナント・アドルフ・ランゲによって始められたこの地の時計製造の歴史を、途絶えることなく今に受け継ぐウォッチ・ブランド、グラスヒュッテ・オリジナル。その妥協なきものづくりの足取りと成果を紹介する。

Photo Takehiro Hiramatsu(digni) Text Yasushi Matsuami

ドイツ時計の“聖地”と呼ばれる、グラスヒュッテ。1845年にフェルディナント・アドルフ・ランゲによって始められたこの地の時計製造の歴史を、途絶えることなく今に受け継ぐウォッチ・ブランド、グラスヒュッテ・オリジナル。その妥協なきものづくりの足取りと成果を紹介する。

  • 組み立て作業 組み立て作業
    組み立て作業は、熟練技術者が行う他、若手技術者の育成もしている。なお工場ではVIP顧客や小売店などの見学を受け付けている。
  • グラスヒュッテの技法 グラスヒュッテの技法
    軸受けのルビーをゴールドシャトンと呼ばれるリングに収め、青焼きしたビスで留める。伝統の技法が、固く守られている。
  • アルフレッド・ヘルヴィグ時計学校 アルフレッド・ヘルヴィグ時計学校
    アルフレッド・ヘルヴィグ時計学校も運営し、後進の育成、グラスヒュッテの伝統の継承にも責任を持って取り組んでいる。
  • グラスヒュッテ新社屋 グラスヒュッテ新社屋
    旧社屋を2002年に一大リノベーションし、さらに2012年に拡張工事をした新社屋。明るくモダンな設計で、近代的な設備が整う。
  • 組み立て作業
  • グラスヒュッテの技法
  • アルフレッド・ヘルヴィグ時計学校
  • グラスヒュッテ新社屋

グラスヒュッテ・オリジナルのマニュファクトリー(時計製造工房)では、時計製造に関するあらゆる部門が統合され、ハイレベルの自社一貫生産体制が敷かれている。コンポーネンツに関しても、ごく一部のパーツを除き、95%が自社内で製造される。自社一貫生産を掲げるスイスのマニュファクチュールでも、これほどの自社製造率を誇るブランドは、ほぼ存在しない。すべてのコンポーネンツは、手作業で研磨・面取り・装飾仕上げなどが施され、熟練技術者の手で組み立てられる。

このブランドを象徴する機構の一つが、ダブルスワンネックだ。伝統的なハイエンドなウォッチでは、時計の歩度を調整するために、白鳥の首を思わせる優雅な曲線を描くスワンネック緩急針が採用されるのだが、通常はシングル仕様であるのに対し、グラスヒュッテ・オリジナルでは、シンメトリーなダブル仕様を採用したモデルを用意している。精度に対するこだわりの高さはもちろん、緩急針の下にある受けと呼ばれるプレートには繊細なエングレーブが施され、このブランドの美的な技術力の高さも雄弁に物語っている。

パノマティックカウンターXL
6時位置に時分針を据え、クロノグラフの秒カウンター用セコンドリングを、12時位置に立体的に配置。その左右にミニッツカウンターとスモールセコンドを備え、それぞれ0の位置が、読み取りやすいよう10時と2時に設定されているのもユニーク。フライバック機能も搭載。3時位置にはパノラマデイト、9時位置には99までのカウンター機能を備え、送り、戻し、帰零をケース左のプッシャーで操作する。

パノマティックカウンターXL 自動巻き、ケース径44mm、SSケース×アリゲーターストラップ、2,732,400円。

こうして、これまで数々の自社製キャリバーを開発してきたグラスヒュッテ・オリジナルだが、シンプルなものからコンプリケーションに至るまで、質実剛健にして真摯なドイツらしいものづくりのスタンスが貫かれている。グラスヒュッテの歴史を語る上で欠かせない時計師ユリウス・アスマンやアルフレッド・ヘルヴィグなどのマイスターの名を冠したハイエンドピースは、そのプライドを示すものだろう。また2002年からアルフレッド・ヘルヴィグ時計学校を運営し、同地の時計製造の伝統継承に尽力している。

セネタ・トゥールビヨン「アルフレッド・ヘルヴィグ」
20世紀初頭のグラスヒュッテを代表する時計師で、ブリッジを持たないフライング・トゥールビヨンの開発に功績を残したアルフレッド・ヘルヴィグ。彼へのオマージュとして、そのスタイルを継承したフライング・トゥールビヨンモデル。12時位置にパノラマデイトを搭載。インデックスのⅠの位置に、シリアルナンバーが隠し文字風にレーザーエングレーブされている。25本限定。

セネタ・トゥールビヨン「アルフレッド・ヘルヴィグ」 自動巻き、ケース径42mm、WGケース×アリゲーターストラップ、12,409,200円。

ここでは、アルフレッド・ヘルヴィグのDNAを受け継ぐフライング・トゥールビヨン、独創的なカウンター機能を備えたフライバック・クロノグラフ、また近年注力している女性用モデルの中から、ブルーのマザーオブパールとダイヤモンドとが絶妙のハーモニーを奏でるムーンフェイズ搭載モデルを紹介している。この優美な文字盤は、2006年に統合されたドイツ・フォルツハイムにある文字盤マニュファクトリーで製作されている。この工房の存在が、ダイヤル製作の創造性を広げていることも押さえておきたい。

パノマティックルナ
タヒチ産のマザーオブパールを透明感あふれるブルーに彩色したダイヤルが目を引くレディースモデル。インデックスに18個のポイントダイヤモンドを、ベゼルとリュウズに65個のダイヤモンドをセット。オフセットされたダイヤルには、ムーンフェイズと、パノラマデイトも搭載されている。サファイアクリスタルバックから、グラスヒュッテ伝統の4分の3プレートとダブルスワンネックも堪能できる。

パノマティックルナ 自動巻き、ケース径39.4mm、SSケース×アリゲーターストラップ、2,138,400円。

東京・銀座にあるニコラス・G・ハイエックセンターのグラスヒュッテ・オリジナルのブティックを訪ね、ブランドの世界観とともに、これらの妥協なきものづくりの成果を確かめてみてはいかがだろうか。

●グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座
TEL 03-6254-7266

※『Nile’s NILE』2019年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。