グラスヒュッテ・オリジナルのマニュファクトリー(時計製造工房)では、時計製造に関するあらゆる部門が統合され、ハイレベルの自社一貫生産体制が敷かれている。コンポーネンツに関しても、ごく一部のパーツを除き、95%が自社内で製造される。自社一貫生産を掲げるスイスのマニュファクチュールでも、これほどの自社製造率を誇るブランドは、ほぼ存在しない。すべてのコンポーネンツは、手作業で研磨・面取り・装飾仕上げなどが施され、熟練技術者の手で組み立てられる。
このブランドを象徴する機構の一つが、ダブルスワンネックだ。伝統的なハイエンドなウォッチでは、時計の歩度を調整するために、白鳥の首を思わせる優雅な曲線を描くスワンネック緩急針が採用されるのだが、通常はシングル仕様であるのに対し、グラスヒュッテ・オリジナルでは、シンメトリーなダブル仕様を採用したモデルを用意している。精度に対するこだわりの高さはもちろん、緩急針の下にある受けと呼ばれるプレートには繊細なエングレーブが施され、このブランドの美的な技術力の高さも雄弁に物語っている。
こうして、これまで数々の自社製キャリバーを開発してきたグラスヒュッテ・オリジナルだが、シンプルなものからコンプリケーションに至るまで、質実剛健にして真摯なドイツらしいものづくりのスタンスが貫かれている。グラスヒュッテの歴史を語る上で欠かせない時計師ユリウス・アスマンやアルフレッド・ヘルヴィグなどのマイスターの名を冠したハイエンドピースは、そのプライドを示すものだろう。また2002年からアルフレッド・ヘルヴィグ時計学校を運営し、同地の時計製造の伝統継承に尽力している。
ここでは、アルフレッド・ヘルヴィグのDNAを受け継ぐフライング・トゥールビヨン、独創的なカウンター機能を備えたフライバック・クロノグラフ、また近年注力している女性用モデルの中から、ブルーのマザーオブパールとダイヤモンドとが絶妙のハーモニーを奏でるムーンフェイズ搭載モデルを紹介している。この優美な文字盤は、2006年に統合されたドイツ・フォルツハイムにある文字盤マニュファクトリーで製作されている。この工房の存在が、ダイヤル製作の創造性を広げていることも押さえておきたい。
東京・銀座にあるニコラス・G・ハイエックセンターのグラスヒュッテ・オリジナルのブティックを訪ね、ブランドの世界観とともに、これらの妥協なきものづくりの成果を確かめてみてはいかがだろうか。
●グラスヒュッテ・オリジナル ブティック銀座
TEL 03-6254-7266
※『Nile’s NILE』2019年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています