The Poetry of Love and Death

『源氏物語』の時代、恋の時間は闇に包まれる夜であった。人々が寝静まるのを待って、男は女の元へ通う。闇の中で光源氏は、母の面影のある懐かしい姫、身分は違うが瞬時に恋をした姫、輝きだす前の原石のような姫などと次々と恋を重ねていく。恋の昇華は宝石の輝きにも似て、永遠に光を放つ。

Photo Takehiro Hiramatsu(digni)  Text Nile’s NILE

『源氏物語』の時代、恋の時間は闇に包まれる夜であった。人々が寝静まるのを待って、男は女の元へ通う。闇の中で光源氏は、母の面影のある懐かしい姫、身分は違うが瞬時に恋をした姫、輝きだす前の原石のような姫などと次々と恋を重ねていく。恋の昇華は宝石の輝きにも似て、永遠に光を放つ。

VAN CLEEF & ARPELS

夕まぐれほのかに花の色を見てけさは霞の立ちぞわづらふ

ヴァンクリーフ&アーペルのクリップ
ピヴォワンヌ クリップ 
WG×PG×ルビー(32.60ct)×ダイヤモンド(10.67ct)116,949,000円(参考価格)

北山の夕まぐれ、療養中の光源氏は、“紫の君”に目を奪われる。この一瞬の出会いで、まだ幼い姫に潜在している“高貴な美しさ”を見いだした。光源氏は“紫の君”を手元に置き、育てることを決意する。数年後の恋に身を捧げたのだ。ヴァン クリーフ & アーペルの“黄金の手”と呼ばれる職人たちは、宝石が本来持つ美しさを最大限に引き出すため、石との瞬間の出合いに心を砕く。あたかも宝石を育むように、巧緻(こうち)を極めた職人の技は、誰もが一瞬にして心奪われる芍薬の花を誕生させるのだ。

ヴァン クリーフ & アーペル ル デスク 
TEL0570-00-8202

GRAFF

心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花

グラフのネックレス
イエローダイヤモンド ネックレス
Pt×YG×WG×イエローダイヤモンド(20.90ct)×ダイヤモンド(24.83ct)148,400,000円。

誰とも分からぬまま光源氏がとりこになる女性“夕顔”は、そこに咲いていた夕顔の花を自らに、花をより美しく輝かせる“露”に光源氏を例えた和歌を送った。和歌が書かれた扇にはほのかな香りが残り、書き流されていた歌が匂い立つようであった。二人の恋の始まりである。

グラフのネックレスは、中央のイエローダイヤモンドが“夕顔”の花、それをより美しく引き立てる“露”のようにホワイトダイヤモンドが配されている。実に知的でありながら無邪気なかわいらしさがある、心引かれずにはいられないジュエリーである。

グラフダイヤモンズジャパン 
TEL03-6267-0811

TIFFANY & CO.

世語りに人や伝へむたぐひなく憂き身をさめぬ夢になしても

ティファニーのネックレス
ネックレス
Pt×ダイヤモンド(150.14ct)×ブラックスピネル(105.70ct)98,805,000円。

亡き母・桐壺(きりつぼ)の面影を求めて“藤壺”に夢中になる光源氏。“藤壺”は一度だけの出会いと心に秘め、二度と会わない決意をする。

しかし、“藤壺”を見舞いに訪れた光源氏との夢のような逢瀬(おうせ)は恋情に再度火を付ける。現世の“恋”を夢の中に閉じ込めたかのような、妖艶な光を放つティファニーのダイヤモンドたち。この世のものではないかのような輝きを、ダイヤモンド一粒一粒に吹き込むティファニーの卓越した職人技があるからこそだ。どのダイヤモンドからも、うっとりとするような恋模様を連想する。

ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク
TEL0120-488-712

CHANEL

照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜に似るものぞなき

シャネルのネックレス
プリュム ドゥ シャネル
WG×ダイヤモンド(33.48ct)70,980,000円(参考価格)

ただ夢のようにぼんやりと見える朧月夜(おぼろづきよ)に、「朧月夜に似るものぞなき」と若々しく麗しい声で歌を詠む姫との偶然の出会い。光源氏は“朧月夜の君”に傾斜していく。そしてお互い名を名乗らないまま、扇だけを交換して別れるのだが……。水面に映る朧月のほのかな光に浮かび上がるがごとき、シャネルのネックレスは、実に艶にして麗しい。光源氏が瞬く間に恋に落ちた、“朧月夜の君”そのものだ。3062粒のダイヤモンドが放つ妖艶な輝き。卓越した技巧の妙である。

シャネル(ファイン ジュエリー) 
TEL03-3501-5730

CHAUMET

夕露に紐とく花は玉鉾のたよりに見えしえにこそありけれ

ショーメのネックレス
フリーズ ネックレス
Pt×エメラルド(17.49ct)×ダイヤモンド(30.97ct)84,000,000円。

光源氏は“夕顔”に正体がばれないよう顔を隠して通い続ける。しかし、夜な夜な通わずにはいられないほど愛おしく思う“夕顔”を、用意した場所に連れ出す際に光源氏であることを明かす。その告白の時に、英知を象徴し、愛の力が強いといわれるエメラルドは、恋に懊悩する者に覚悟を与える。霧に隠されていた“玉鉾(たまぼこ)”が、力強く輝きだす瞬間である。

ショーメ 
TEL03-3613-3188

CHOPARD

うつせみの羽に置く露の木隠れて忍び忍びに濡るる袖かな

ショパールのネックレス
ネックレス
RG×黒蝶パール×ルベライト(38.86ct)×ダイヤモンド(9.93ct)33,054,000円

自分の思い通りにならない“空蝉(うつせみ)”を落とすため、光源氏は“恋のゲーム”を仕掛ける。二人の知的な恋の駆け引き、心理戦のあやは、恋愛映画のワンシーンを見ているようだ。毎年、ショパールがカンヌ国際映画祭のために制作する「レッドカーペット コレクション」は、開催回数と同じ数のジュエリーを発表。今年は66の全て1点もののユニークピースが披露された。光源氏の情熱と、空蝉のしたたかさをルベライトの赤と黒蝶(くろちょう)パールの黒が見事に表現している。

ショパール ジャパン プレス 
TEL03-5524-8922

※『Nile’s NILE』2013年11月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。