Jazz cafe & Bar DUG

Photo Satoru Seki  Text Yasushi Matsuami
ジャズ特集、Jazz cafe & Bar DUG
中平塁 なかだいら・るい
1972年、DIG、DUGの創業者である中平穂積氏の長男として東京に生まれる。当初ジャズにも飲食店にも関心が薄く、ジャズ喫茶とは無関係の職に就くも、退職した21歳の時から、newDUGを手伝い始め、2007年マネージャーとなり現在に至る。「新宿はバブルや都庁移転など時代の波に翻弄されたり、ここ数年は再開発が進んで若い人が増えたような印象はありますが、ウチの店は変わったという感じはないんですよね。コロナ後に年配の方がちょっと減って、外国人旅行者が増えたっていうぐらい。時間帯や客層を見ながら、かける曲も変えたりしていますね」

日大芸術学部で写真を学びながらジャズ喫茶に通い詰めた中平穂積氏が、卒業後の1961年に開業したジャズ喫茶DIG。店名はマイルス・デイヴィスのアルバム名にちなむ。オーディオ、レコードコレクション、コーヒーの味にまでこだわり、音楽に集中できるよう会話禁止も徹底。「DIG党」というべきジャズ愛好家からの支持を集めた。

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レンガを基調とする店内には、一人で訪れても落ち着けるスペースから、グループで酒を酌み交わすニーズに対応した広めのテーブル席まで用意。壁にはジャズ写真家でもある中平穂積氏撮影のジャズメンのポートレートが掛かる。

67年には新店舗DUGを出店。夕方からはアルコールも出し、会話も許容し、ジャズをより気軽に楽しむことを目指す。77年には靖国通り沿いに地上3階地下1階のnewDUGもオープン。3階ラウンジはジャズ界の名士や演奏家、文化人、芸能人らが集うサロンとなる。その後、何度か移転を繰り返し、2007年かつてのnewDUGの地下を新しいDUGとしての営業を始め、現在に至る。

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    開店の11:00から18:30はチャージなしのカフェタイム。この時間帯は、私語は控えめに。18:30から閉店の23:00まではバータイム、チャージ500円。この時間帯はジャズを聴きながら会話も楽しめる。
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    カウンターに座ったら、バーボンかスコッチか、人気のウォッカトニックか。6時間をかけて1ℓを抽出する水出しコーヒー用のウォータードリッパーの存在感も格別。
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    日本のジャズ写真家のパイオニアである中平穂積氏の往時の写真展のチラシも並ぶ。
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    ジャズに耳を傾けながらめくる中平穂積氏撮影のジャズメンの写真集も、来訪者の楽しみの一つ。
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「落ち着けて、一人でも安心できる空間だと、よく言われます」

創業者の長男で現マネージャーの中平塁氏はそう語る。レンガを基調とする空間は77年当時のまま。水出しコーヒーのウォータードリッパーや古びた掛け時計も “らしい”雰囲気を醸し出す。音響システムは、元山水電気の小林重雄氏作のオリジナルアンプを通してJBLのスピーカーLE8Tを鳴らす。音域のバランスや、どの場所でもいい音が届くよう計算されている。
「好きなお酒と音楽でくつろいでいただければ。こうじゃなきゃ、というルールなんてないですから」

ジャズの初心者にとっても、一家言あるマニアにとっても、DUGは居心地のいい“ジャズの聖域(サンクチュアリ)”であり続けている。

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中平穂積氏はアンティークの掛け時計収集も趣味だったという。店内の調度品にも創業者の趣味性が反映され、それがDUGならではの雰囲気を醸成している。

●Jazz cafe & Bar DUG
東京都新宿区3-15-12
TEL 03-3354-7776
www.dug.co.jp


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※『Nile’s NILE』2024年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

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