日大芸術学部で写真を学びながらジャズ喫茶に通い詰めた中平穂積氏が、卒業後の1961年に開業したジャズ喫茶DIG。店名はマイルス・デイヴィスのアルバム名にちなむ。オーディオ、レコードコレクション、コーヒーの味にまでこだわり、音楽に集中できるよう会話禁止も徹底。「DIG党」というべきジャズ愛好家からの支持を集めた。
67年には新店舗DUGを出店。夕方からはアルコールも出し、会話も許容し、ジャズをより気軽に楽しむことを目指す。77年には靖国通り沿いに地上3階地下1階のnewDUGもオープン。3階ラウンジはジャズ界の名士や演奏家、文化人、芸能人らが集うサロンとなる。その後、何度か移転を繰り返し、2007年かつてのnewDUGの地下を新しいDUGとしての営業を始め、現在に至る。
「落ち着けて、一人でも安心できる空間だと、よく言われます」
創業者の長男で現マネージャーの中平塁氏はそう語る。レンガを基調とする空間は77年当時のまま。水出しコーヒーのウォータードリッパーや古びた掛け時計も “らしい”雰囲気を醸し出す。音響システムは、元山水電気の小林重雄氏作のオリジナルアンプを通してJBLのスピーカーLE8Tを鳴らす。音域のバランスや、どの場所でもいい音が届くよう計算されている。
「好きなお酒と音楽でくつろいでいただければ。こうじゃなきゃ、というルールなんてないですから」
ジャズの初心者にとっても、一家言あるマニアにとっても、DUGは居心地のいい“ジャズの聖域(サンクチュアリ)”であり続けている。
●Jazz cafe & Bar DUG
東京都新宿区3-15-12
TEL 03-3354-7776
www.dug.co.jp
▼関連記事 「東京ジャズ喫茶 60-70年代のリズム」
・Jazz cafe & Bar DUG
・ジャズと聴き手をつなぐプロの気概
・レコードを回し続ける
・「ジャズ喫茶への誤解を修正」が呼んだ海外からの意外な反応
※『Nile’s NILE』2024年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています