“聖地”のDNAを宿す矜持

ドイツ時計製造の聖地とうたわれるグラスヒュッテ。
ここで1845年に創業され、大戦後の苦難の時代にも途切れることなく歴史を受け継いできたウォッチブランド、グラスヒュッテ・オリジナル。ドイツの銘品ならではの端正なたたずまいの中に息づく“聖地”のDNAを感じたい。

Text Yasushi Matsuami

ドイツ時計製造の聖地とうたわれるグラスヒュッテ。
ここで1845年に創業され、大戦後の苦難の時代にも途切れることなく歴史を受け継いできたウォッチブランド、グラスヒュッテ・オリジナル。ドイツの銘品ならではの端正なたたずまいの中に息づく“聖地”のDNAを感じたい。

グラスヒュッテ・オリジナル
パワーリザーブ100時間を誇る自社製パーペチュアルカレンダーキャリバー36-12を搭載。シリコン製ヒゲゼンマイの採用により、耐磁性も高い。「セネタ・エクセレンス・パーペチュアル・カレンダー」自動巻き、ケース径42㎜、アリゲーターストラップ、5気圧防水。(右)SSケース仕様3,080,000円。(左)RGケース仕様4,840,000円。

ドイツ時計産業の“聖地”と呼ばれる場所がある。ドイツ東部ザクセンの州都ドレスデン郊外の小村、グラスヒュッテがそれである。1845年、ドレスデンの宮廷時計師の下で腕を磨いたフェルディナント・アドルフ・ランゲを中心とする数名の時計師たちが開いた工房がルーツとなり、時計製造の伝統が育まれていく。

しかしその歴史は、第2次大戦によって中断を余儀なくされる。壊滅的な戦禍に遭ったばかりか、戦後旧東ドイツの政治体制下で、この地の全ての時計工房がグラスヒュッテ・ウーレン・ベトリーブ(略称GUB)という国営企業に統合されてしまう。 とはいえこの時期にも世界の時計市場からは隔絶されながら100%自給自足による時計製造が続けられた。

1990年、念願の東西ドイツ統合が実現するとGUBは民営化され、グラスヒュッテ・オリジナルというブランド名のもとに新たなスタートを切る。2000年にはスウォッチグループ傘下となり、生産体制をより確固たるものにし、今日に至っている。つまり、数あるグラスヒュッテの時計ブランドの中でも、グラスヒュッテ・オリジナルはドイツ時計の歴史と伝統を途切れさせることなく受け継ぎ、進化させてきたメゾンと言える。

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。