当時の銀座といえば、有楽町に本部を持つGHQの関係者やアメリカ兵が多く出入りする場所だった。彼らから少しずつうわさが広がり、日本にもインドの料理や文化が根付いていったのだ。
創業当時から変わらない定番メニューの一つに、「ムルギーランチ」がある。骨つきの鶏もも肉が入ったカレーにイエローライス、キャベツとポテトの炒め物が添えられたワンプレートだ。これは、南インドのローカル料理「ミールス」が発想の元になっているのではないかと善己さんは指摘する。「ミールス」とは、ライス、カレー、6〜7種類のおかずが1枚の大きな皿にのせられた定食だ。当時、限られた食材しか手に入らない中でもインド文化を日本に伝えたいという初代の思いが伝わってくるようだ。レシピは当時から変わっていない。ただ、昔と比べて今は食材もスパイスもいいものが手に入るので、少しずつアップデートしているのだという。
「伝統を守ることと、時代に合わせて変化していくことの両立は難しいですが、そもそも銀座自体が古典文化と最新のトレンドが共存している街。そんな街の空気を背負って店に立っている店主同士のつながりも強いので、支え合いながらみんなで時を重ね、成長しているという実感があります。これからも街は大きく変わっていくのでしょうが、守るものは守り、変えるところは変え、進化しながら続けていきたいです」
●ナイルレストラン
東京都中央区銀座4-10-7 TEL 03-3541-8246
営業時間 平日11:30 ~ 21:30 日曜祝日11:30 ~ 20:30
火・第1第3水曜休み
www.ginza-nair.com
※『Nile’s NILE』2025年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています