日本文化の総合表現

滋賀県、八日市に本店を構える招福楼。凛とした門構え、掃き清められた庭、提供される料理、どこを切り取っても一流の風格を見せる名店だ。当主の中村成実氏は、その本店と東京店の両方を統括。東京駅の目の前、丸ビルの36階というロケーションの中で、本店と同様の哲学を貫く。

Photo Haruko Amagata  Text Izumi Shibata

滋賀県、八日市に本店を構える招福楼。凛とした門構え、掃き清められた庭、提供される料理、どこを切り取っても一流の風格を見せる名店だ。当主の中村成実氏は、その本店と東京店の両方を統括。東京駅の目の前、丸ビルの36階というロケーションの中で、本店と同様の哲学を貫く。

招福楼 東京、春のごちそう、アイナメを漬け焼き
春のごちそう、アイナメを漬け焼きにし、炙ったフキノトウを散らす。骨切りされた身はふっくらと柔らかく、フキノトウのほろ苦い風味と調和。春らしい味覚を存分に味わう。

お茶と、その根底にある禅の思想が、中村氏と招福楼の哲学を形作っている。中村氏は、京都の名刹(めいさつ)、妙心寺にて学生時代住み込みの小僧として過ごし、その後得度して修行した経験の持ち主。家業に戻ってからも師との交流を続け、また茶の湯を身につけた。料理屋の主人でありながら、文化人として日々、客人をもてなす。

「“料理人をめざして職人になるな。文化人になれ”というのは、父の教えなんです」と中村氏。父親の秀太良氏は、文化の粋が集まる現在の招福楼を作り上げた人物。

「建築がわかる、陶芸もわかる、花も生けられる、食材もわかる、料理もわかる。それぞれ専門家がいるけど、全部を知るのが文化人。料理店の主人はすべて扱っているのだから、すべて勉強しなくてはいけません」

これが、招福楼を形作っている思想だ。一歩足を踏み入れると別世界が広がる。料理もまた、その世界の一部。料理を食べることで、季節ごと、文化ごといただく。そんな体験を提供する店である。

招福楼

中村成実
1955年滋賀県生まれ。招福楼主人、中村秀太良氏の次男として生まれる。学生時代は妙心寺霊雲院にて小僧として過ごし、その後得度。80年より家業に戻り、92年より4代目を継ぐ。

●招福楼 東京店
東京都千代田区丸の内2-4-1
丸ビル36F
TEL 03-3240-0003
www.shofukuro.jp

※『Nile’s NILE』2019年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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