自然と人をつなげる薪焼きの肉

旨い肉を食べたい時に訪れたいのが「タクボ」だ。食材と人を大切に、誠実かつシンプルに料理に向き合ってきたシェフの田窪大祐氏がたどり着いた、高温でカリカリ、ジューシーに焼き上げた薪(まき)焼きの肉は、リピーターが後を絶たない逸品だ。

Photo Masahiro Goda  Text Rie Nakajima

旨い肉を食べたい時に訪れたいのが「タクボ」だ。食材と人を大切に、誠実かつシンプルに料理に向き合ってきたシェフの田窪大祐氏がたどり着いた、高温でカリカリ、ジューシーに焼き上げた薪(まき)焼きの肉は、リピーターが後を絶たない逸品だ。

薪焼き始めました!

代官山に店を移してから、新しい挑戦として薪焼きを始めました。ナラの木を40分から1時間くらい熱した熾火(おきび)で焼くのですが、遠火で均一に焼く炭火と違い、高温の近火で一気に焼きます。

タクボ、薪

うちの場合、冷蔵庫から出したてのサーロインの塊肉を、薪の熾火でこまめに裏返しながら10分で焼き上げます。最近ではしっかり常温に戻した肉を、時間をかけて低温調理するのが主流なのですが、あえて常識を覆したいというわけではありません。単純に、理想の焼き上がりのイメージから逆算していくと、今のような焼き方になるのです。

僕の場合、外側にパリッとした肉の壁を作りたい。それには、常温に戻した肉だと、火が中まで入り過ぎるのでダメ。薪焼きで一気に焼くことで、ナイフで切った時には身にとどまっていた肉汁が、口の中でかんだ時に初めてあふれ出してくる、理想の焼き上がりが実現できます。

肉質を吟味した“十勝田くぼ牛”

店では北海道で「十勝ハーブ牛」を育てているノベルズ食品の「N34」という肉を使っています。これは、黒毛和牛にホルスタインを掛け合わせた交雑種(F1)の経産牛に、ハーブなどを混ぜたエサを与え、34~38カ月と長期間肥育したものです。赤身の肉のおいしさと、黒毛和牛の上質な脂の両方の性質を持っていて、薪焼きにすると香ばしくて赤身がしっとりとした、理想の味わいになるのです。

さらに特徴的なのは、僕たちシェフとのコミュニケーションを重視してくれること。タクボの場合は、ブロック肉の画像を週に1度送ってもらい、サシの入り方や赤身の具合などを確認して、肉を選んでいます。こだわって牛を育てているだけでなく、かなりの頭数を扱っているからこそ可能なシステムでもあります。

僕が目で見て「いい」と思った肉を、自信を持っておすすめするという意味で、“十勝田くぼ牛”とうたわせていただいています!

このN34は熟成したワインのようなガーネット色が特徴的。その中でも、一番肉質が安定するサーロインを提供しています。黒毛和牛の脂が胃にもたれるという人でも、さっぱりと食べられるんです。基本的には牛肉は“十勝田くぼ牛”のサーロインですが、ご要望があればハラミや熊本の赤牛を出したりします。

生産者には必ず会いに行きます

いくらおいしくても、食材に対して愛がなかったり、清潔な環境で作っていなかったりすると嫌なんです。だから、生産者さんには必ず会いに行きます。一人のこだわって作っている生産者さんを知ると、その知り合いを紹介してもらって、輪が広がっていくことが多いですね。

現地でその食材がどのように食べられているかが、料理のインスピレーションになることもあります。自分も行くし、生産者さんにも店に来てもらって、何が必要かをお互いが理解し合えている関係が理想ですね。

タクボ、美味しいと思う食材に出合う

例えば、北海道の福田農園の王様しいたけや、和歌山県の山利の釜あげしらす、広島県の梶谷農園のハーブ、岡山県のエバーグリーンのオリーブオイルなど。さらにおいしいと思う食材に出合ってもすぐに乗り換えず、生産者さんに相談して一緒にそれよりさらにおいしいものを作りたいと考えています。

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。