「ジャンルにとらわれない料理は斉藤さんの影響。山田なんて知らないと言いそうな方ですが、恩師ですね」
チャンスが訪れる。来日したアドリア氏のエスコート役を担い、「あなたの元で働きたい」と直談判すると了承され、再びスペインへ。1年半、アドリア氏の元で研鑽を積んだ。「大勢の料理人にいろんなものを実験的に作らせて、洗練させていく。天才的な人です」と振り返る。
「フェランからは、すべてに疑問を持てと言われました。なぜ日本では、昆布と鰹で出汁をとるのか。すべてを理解してからやれ、と」
帰国して旬香亭に戻ると、斉藤氏に「エル・ブリの通りにやれ。最初は理解されなくても、やり続けろ」と言われた。結果、山田氏は亜酸化窒素を使ったエスプーマの第一人者として名を博すこととなる。料理の信条を問うと、シンプルな答えが返ってきた。
「何を食べさせたいかより、お客様が望んでいるものを察すること。今でも日々勉強です」
山田チカラ
1971年静岡県生まれ。熱海のホテルのフランス料理店などで修業後、スペイン「エル・ブリ」のフェラン・アドリア氏に師事。2007年東京・南麻布に「山田チカラ」を開業。2018年に「山田チカラ ホノルル」と「山田チカラ ニューヨーク」をオープンした。今年4月にはバルセロナにも出店。
●山田チカラ
東京都港区南麻布1-15-2 1F
TEL 03-5942-5817
www.yamadachikara.com
※『Nile’s NILE』2019年3月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています