世界のガストロノミーの潮流
23年のアワードの中でも、圧倒的な強さを見せているのがスペインだ。2位「ディスフルタール」(バルセロナ)、3位「 ディヴェルソ」(マドリッド)、4位「アサドール エチェバリ」(ビルバオ近郊)と、上位を独占している。このほかにも3店舗、全6店の入賞を果たしているのは世界最高だ。しかもスペイン各地からの入賞は、まさにその層の厚さを物語る。
さらにベストオブベスト(一度トップになったレストランは殿堂入りし、ランク外になる)まで含め、「エルブリ」「エルセジュール・カンロカ」と、枚挙にいとまがない。
また、ここ数年評価が高いのがイタリアだ。7位入賞の「リド 84」、16位「レアレ」、34位「ウリアッシ」、41位「カランドレ」、42位「ピアッツァ・ドゥオーモ」と5店舗と、これはスペインに次ぐ店舗数だ。イタリアの入賞店は、北から南まで、また山から海まで各地に広がっており、地方料理の集大成である、イタリアらしい評価のされ方と言える。
一方、南米すべてからは12店舗がランクイン。今回1位に輝いた「セントラル」を有するペルーは入賞4店舗。メキシコは3店舗、ブラジル、チリ、コロンボ、アルゼンチンと、広範囲にデスティネーションレストランが広がっている。実際にこれらの国では、ガストロノミーで観光客を呼び、経済力をつけるというような、牽引力のあるシェフを輩出してきた背景があり、それが実った証といえるだろう。
社会的貢献が大きく評価される特別賞
次に、個人の特別賞を見ていこう。「アイコンアワード」と評される功労賞を今年受賞したのは、モラキュラ料理以来のイノベーティブの立役者とも評される「ムガリッツ」のアンドニ・ルイス・アドゥリスシェフだ。多くの日本人が修業した店でもあるが、後進の指導に熱心で、30年以上も世界のガストロノミーを牽引してきたシェフとして誠にふさわしい受賞であるといえる。
「ベスト フィメールシェフ」を受賞したのは、メキシコの「ロゼッタ」のエレーナ・レイガダスシェフ。NY、イタリア、ロンドンなどで多彩な経験を積んだのち、古い書物などに残るメキシコ料理の歴史をひも解き、古来の発酵技術を駆使したパンを焼くことから、オリジナリティーに富んだ料理が始まった。メキシコもベスト50において常に評価が高いが、現在、最も注目されるメキシコのレストランの一つだ。
「ベストペストリーシェフ」には、ランクイン外から、エクアドルの首都キトにある「ニューマ」のピア・サラザールシェフが受賞。すでに「ラテンアメリカベストペストリーシェフ2022」を受賞しており、その勢いに世界が注目した。果物や野菜による実験的な料理が高く評価された。
「ハイエストクライマー賞」を受賞したのは、8位の「アトミックス」。去年の33位からのジャンプアップだ。ニューヨークで、14席のこぢんまりとした店内で、シェフとマダムの二人三脚によるもてなし、イノベーティブな韓国料理が、多くのファンを虜にしている。
こうして、ランキングを読み解いてみると、「世界のベストレントラン50」には、単なるレストランランキングとしての側面だけでなく、地域創生、ダイバーシティー、持続可能性への影響力も非常に大きいことがよくわかる。そうしたことを知ってランキングを見てみると、デスティネーションレストランマップ以上の楽しみが得られはずだ。