世界のベストレストラン50を読み解く

21年目を迎える「世界のべストレストラン50」。食のアカデミー賞とも称される、華やかなアワードは、世界のガストロノミー界の潮流を表しており、そのランキングからトレンドが見えてくる。さらに昨今はランキングにとどまらず、ダイバーシティー、地方創生、持続可能性といったSDG’sな側面も強調されてきている。そうした意識を持って俯瞰してみると新たな食の世界地図が見えてくる。

Text Hiroko Komatsu

21年目を迎える「世界のべストレストラン50」。食のアカデミー賞とも称される、華やかなアワードは、世界のガストロノミー界の潮流を表しており、そのランキングからトレンドが見えてくる。さらに昨今はランキングにとどまらず、ダイバーシティー、地方創生、持続可能性といったSDG’sな側面も強調されてきている。そうした意識を持って俯瞰してみると新たな食の世界地図が見えてくる。

「世界のベストレストラン50」2023年
アワードが終わった後の恒例の集合写真。トロフィーを手にしたシェフもそうでないシェフも、お互いの健闘をたたえ合う素晴らしいひとときだ。

2023年6月20日、スペイン第3の都市、バレンシアで「世界のベストレストラン50」のアワードが華やかに開催された。世界5大陸 27の国と地域から、1080人の食の識者の投票によってレストランのランキングが決まる、料理界のアカデミー賞とも言われる催しだ。場所は「シティ オブ アーツ&サイエンス」。バレンシア出身の建築家、サンティアゴ・カラトバがいかんなく感性を発揮した超近代的な建物で、まさにガストロノミー界の今を評するにふさわしい舞台だった。今年で21回目を迎えるアワードは、2023年度のアワードは果たして、どのような結果になったのであろうか。

セントラルのマルチネス・ビルヒリオシェフと奥様のピア・レオンさん
1位に輝いたセントラルのマルチネス・ビルヒリオシェフと奥様のピア・レオンさん。ペルーの食の民度を高めるために、二人三脚で多大な貢献をしている。

ベスト50のダイバーシティーを表す、覇者「セントラル」

23年度のトップレストランは、南米ペルーの「セントラル」。昨年2位、ここ数年5位前後を死守してきた名店だけに、誰しもが今年こそはと思ったに違いないが、見事に予想通り、覇者のクリスタルトロフィーを手に入れた。イギリスのウィリアム・リード社が創設したこの仕組みにおいて、欧米以外の国が頂点に上り詰めたのは初めてのことだ。21年かけて、ようやくそのボーダーが取り払われた、記念すべき受賞といえよう。「セントラル」のシェフ、マルティネス・ビルヒリオは、持続可能性を重視し、ペルー固有の食材を尊重しながら、自国の伝統への敬意を表現した料理を創作する。また、4年前にクスコに「ミル」をオープンし、そちらは夫人のピア・レオンが切り盛りしている。雇用を創生するなど、まさに二人三脚で社会活動にも熱心に取り組んできた。昨年、東京に「MAZ」を開き話題になったが、ペルー料理の国際化という彼らの目標に、今回の受賞が大きな後押しになったことはいうまでもない。

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。