2023年6月20日、スペイン第3の都市、バレンシアで「世界のベストレストラン50」のアワードが華やかに開催された。世界5大陸 27の国と地域から、1080人の食の識者の投票によってレストランのランキングが決まる、料理界のアカデミー賞とも言われる催しだ。場所は「シティ オブ アーツ&サイエンス」。バレンシア出身の建築家、サンティアゴ・カラトバがいかんなく感性を発揮した超近代的な建物で、まさにガストロノミー界の今を評するにふさわしい舞台だった。今年で21回目を迎えるアワードは、2023年度のアワードは果たして、どのような結果になったのであろうか。
ベスト50のダイバーシティーを表す、覇者「セントラル」
23年度のトップレストランは、南米ペルーの「セントラル」。昨年2位、ここ数年5位前後を死守してきた名店だけに、誰しもが今年こそはと思ったに違いないが、見事に予想通り、覇者のクリスタルトロフィーを手に入れた。イギリスのウィリアム・リード社が創設したこの仕組みにおいて、欧米以外の国が頂点に上り詰めたのは初めてのことだ。21年かけて、ようやくそのボーダーが取り払われた、記念すべき受賞といえよう。「セントラル」のシェフ、マルティネス・ビルヒリオは、持続可能性を重視し、ペルー固有の食材を尊重しながら、自国の伝統への敬意を表現した料理を創作する。また、4年前にクスコに「ミル」をオープンし、そちらは夫人のピア・レオンが切り盛りしている。雇用を創生するなど、まさに二人三脚で社会活動にも熱心に取り組んできた。昨年、東京に「MAZ」を開き話題になったが、ペルー料理の国際化という彼らの目標に、今回の受賞が大きな後押しになったことはいうまでもない。