今回紹介したジェットファームのグリーンアスパラガスとおぐにビーフの牛肉も、店に欠かせない存在。
「ジェットファームはグリーンアスパラガス専門の農家さん。農園主の長谷川博紀さんの職人的で熱い人柄を反映した、格別に上質なアスパラガスを作っています」
一方のおぐにビーフの和牛はブフ・ブルギニオン(煮込み)にする首肉や、シンプルに焼いて提供するサーロインを主に仕入れる。なお、「サーロインをシンプルに焼いた料理を、私は長らく作っていなかったんです」と言う。しかし店を長く続けるということは、お客と一緒に年を重ねるということ。
「お客様から徐々に“柔らかい牛肉の料理”というご要望が増えてきました。それで赤身のおいしいおぐに牧場のサーロインを4年ほど前から使うようになり、好評です」
こうした生産者たちとのつながりのベースには、当然ながら信頼がある。感想と感謝を密に伝えることで、心許す関係を築いてきた。「これからも長く皆さんの素材は使わせていただきたいです」と話す。
ただし常に同じ素材を使い続け、お客を飽きさせてもいけない。「なので、たとえば“王様しいたけ”なら、料理に登場するのはおおよそ2年に1回。それで15年以上経ちます」。誠実な関係を長く続ける。
「つながりは途切れないように、ということは大事に思っていますね」
今、「ル・ブルギニオン」で提供する料理には函館やその近辺産の素材と、フランス産食材が併存する。ワインも同様だ。「自分の中でフランスの食への愛が消えることはないと思いますが、故郷愛がそこに重なってきました」と菊地さん。
「年とともに、函館愛は強まっています」と笑う。
菊地美升 きくち・よしなる
1966年、北海道生まれ。辻調理師専門学校卒業後、六本木「オー・シザーブル」や勝どき「クラブNYX」を経て、91年渡欧。リヨン近郊「プーラルド」、モンペリエ「ル・ジャルダン・デ・サンス」、ボーヌ「レキュソン」、フィレンツェ「エノテカ・ピンキオーリ」で修業。96年に帰国し、表参道「アンフォール」でシェフを務める。2000年に独立し、西麻布「ル・ブルギニオン」をオープン。
●ル・ブルギニオン
東京都港区西麻布3-3-1
TEL 03-5772-6244
le-bourguignon.jp